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2005年10月21日

「ポロロッカ」クイズ王・西村顕治の伝説

【テレビ】クイズ王最強決定戦、フジテレビ721で放送-水津氏・道蔦氏・能勢氏ら計8人で
 芸スポ板に面白そうなスレが立っていたので、一通り閲覧してみた。ごく普通の2ちゃんねらーのクイズ王話が読めて、なかなか興味深い。これを読んでいるうち、ふっと頭の中に浮かんだ事柄を、きちんと文章でまとめてみたくなった。

 大体読んでみて感じたのは、今回出場者となるクイズ王8人よりも、西村顕治さんの方が遙かに話題になっていること。クイズ王としてテレビから姿を消して10年以上が経過しているけれど、いまだに“クイズ王”というと“西村”ってイメージが、ヲタクではないクイズ好きor興味がある方には刷り込まれているように感じた。あの巨体&存在感そのもので凄いインパクトがあるし、早押しの反応速度&押し方も強く印象に残る。これだけで十二分に個性的なのだが、クイズ王西村さんの印象をさらに強めているのが、早押しクイズにおける一つの伝説的なエピソードである。“伝説的”ではあるものの、その出来事は紛れもない事実である。ただ事実は時と共に風化し、部分的に誤った形で伝わってしまうこともしばしば。そこで多少なりとも、往時の出来事を、できるだけ正確に伝えてみようと思った次第。

 その“伝説”が放送されたのはTBSで、1992年2月25日に放送された「ギミア・ぶれいく」内の「第6回史上最強のクイズ王決定戦」においてのこと。番組は予選、本戦の模様を流した後、決勝戦を残すのみとなった。その決勝戦の対戦カードは、前回チャンピオンの西村顕治さんと、激戦を勝ち上がってきた挑戦者の斉藤喜徳さん。奇しくも早稲田大学の先輩・後輩という同門対決となった。
 決勝戦の形式は2部制。パート1は超難問早押しクイズ。パート2はカプセルクイズ。パート1のルールは7問限定の早押しクイズ。正解すれば+1p、誤答をすれば問題文を全て読み切って相手に解答権が与えられる(これは実質、相手に+1pとなるケースが大)。7問限定であるため、どちらか一方がリードする形でパート2に移行することになる。
 決勝を戦う前に、司会の草野仁さんから、双方に「早押しクイズを早く押すためのコツ」という質問がなされた。その際、西村さんは「問題を聞く時に、先回りしながら聞いていく。何を答えとして求めているのかを、常に探しながら聞いていくようにすれば、コンマいくつかは早くなる」と回答。この決勝前のやり取りは、当時見ていた人の大多数は、聞き流していたコメントだと思われる。何気ないやり取りの中で発されたこのコメントがどれほど重要な意味を持っていたのか、それはすぐに実証される。
 パート1の早押しクイズが始まる。

1問目「デザイナー、エルサ・ペレッティが生み出した、ジュエリー、オープンハート/」(3.7秒)
西村「ティファニー」

2問目「ソビエト連邦初のノーベル文学賞受賞者となりながら、政府の/」(4.1秒)
西村「ボリス・パステルナーク」

まずは西村さんが1、2問目を連続正解。スコアを2-0とする。やはりクイズ王は強い。このままクイズ王のペースで早押しが進むかと思われたが、斉藤さんが反撃。

3問目「スプリングボックスという別名を/」(1.4秒)
斉藤「南アフリカ」

これで斉藤さんが1点を返した。1点を取って気持ちが楽になったという斉藤さん。

4問目「レッド・デビルズというバックバンドを率いて自らもハーモニカを吹きながら歌う、「ダイ・ハード」でおなじみの/」(6.3秒)
斉藤「ブルース・ウィリス」

何と斉藤さんも連続正解。4問目にして2-2の同点。こうなると今度は俄然、斉藤さんの流れであり、斉藤さんがパート1をリードして折り返すことを期待したくなる。追い上げ急の斉藤さんを相手に、西村さんが次の問題で取った行動が、現在でも語り継がれる事になる伝説的な押しである。

5問目「アマゾン川で/」(0.9秒)
西村「ポロロッカ」

同点にしたばかりの斉藤さんに対し、再び点差を1点に広げた正解である。しかしこれはただの1点差ではないことは明白である。その後、6問目は西村さんが正解。スコアは4-2。7問目は勝負に出た斉藤さんが誤答をし、全文を読まれた状態で西村さんが難なく正解。パート1のスコアは5-2。
 パート2のカプセルクイズでも西村さんは斉藤さんを圧倒。結果は15-7で西村さんが圧勝し、クイズ王の座を防衛した。

 この時の「ポロロッカ」の正解は、視聴者はもちろん、番組スタッフにも強い印象を残した。その後もこの場面は「史上最強のクイズ王決定戦」の番組CMでたびたび挿入されたことから、それは明白である。わずか1秒程度でクイズ王の凄さを表現するのに、これ以上に適した映像は無いであろう。
 こうして「ポロロッカ」の問答は、クイズ王番組が終わるまで、半期に一度のペースでお茶の間に流され、視聴者に繰り返し刷り込まれた。

 最後の「史上最強のクイズ王決定戦」が放送されてから、既に10年を超える時が経過している。10年も経てば、正確な状況を覚えていることは難しい。にも関わらず、いまだに“クイズ王”という単語に対して、“西村顕治”の名前、圧倒的な存在感を誇る巨体、ダイナミックな早押しボタンの押し方、そして「アマゾン川で/」「ポロロッカ」の問答が脳裏に浮かぶのは、あの場面が目に焼き付いている者には、至極当然のことであろう。