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【主張】子供の権利 わがまま許す条例は疑問

2009.2.22 03:03
このニュースのトピックス主張

 家庭のしつけや学校の指導を難しくするような条例づくりが全国に広がっている。広島市でも子供の権利条例の制定作業を進めている。こうした条例は権利をはき違えたり、わがままを許す風潮を助長している。慎重に検討すべきである。

 子供の権利条例をつくる自治体が出始めたのは、日本が平成6年に国連の「児童の権利条約」を批准してからだ。

 条約の目的は18歳未満の子供たちを飢えや病気などから保護することである。だが問題は、こうした本来の目的を外れて特定の政治的狙いのために子供の「意見表明権」といった権利ばかりを強調するケースが多いことだ。

 例えば、京都の高校生らが国連児童の権利委員会で「制服導入は意見表明権を定めた条約に違反する」と訴え、海外委員から「制服もない国の子供に比べて格段に幸せ」などとたしなめられた。

 また「思想・良心の自由」などの規定を盾に卒業・入学式の国旗・国歌の指導を「強制」と反対する例も各地でみられ、埼玉県所沢高校で生徒会や教職員が校長主催の卒業式をボイコットする問題も起きた。「プライバシー尊重」は家庭のしつけを妨げかねない。

 条例を制定した自治体でも審議過程では反対が強く、高知県の条例では「休む・遊ぶ権利」に対して「甘やかすな」などの批判が出て削除された。昨年条例を可決した札幌市では、「一部教職員が子供の意見や権利を利用して学校現場を混乱させるおそれがある」などの反対意見が噴出した。

 広島市は昨年、条例の骨子試案を公表し、市民から意見募集している。骨子には「学び、遊び、休息すること」などの権利のほか、意見表明権などもある。これに保護者や学校関係者から指導しづらくなるなど懸念の声が強く、反対の署名活動も行われている。

 広島市は「子供が健やかに育つための取り組み」などと説明している。だが、目的や条文が曲解され、教育に弊害が大きいことは過去の例にある。懸念は当然だ。

 最近の条例制定の動きは子供が被害に遭う事件や、いじめ、児童虐待などが背景にあるようだ。

 だが、いじめや虐待防止には、親子の愛情や思いやりの心を育てることこそ重要で、時には厳しくしかる、毅然(きぜん)とした教育が今ほど必要なときはない。それを妨げ、縛る条例は極めて疑問だ。

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