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受精卵取り違え:1人作業が常態化…担当医、15年間

 香川県立中央病院(高松市)で発覚した体外受精卵の取り違え疑惑で、担当医の川田清弥医師(61)が同病院で体外受精の治療を開始した93年から約15年間、1人で体外受精を担当していたことが分かった。川田医師は取り違えの原因を「ダブルチェックがなかった」と説明しており、同様のミスがいつでも起こりうる状態だった可能性が出てきた。【矢島弓枝、大久保昂】

 同病院によると、川田医師は79年12月、不妊治療の専門医ではなく、一般的な産婦人科医として赴任。93年4月から同病院で体外受精に取り組み始めた。これまでに約1000例を担当したが、他に体外受精をする医師はおらず、作業は1人で行っていたという。

 取り違えは、川田医師が20代女性の受精卵の発育状態を調べるためにシャーレを複数取り出し、ふたを外して受精卵を検査する作業台に並べたが、この時、直前に検査した40代女性のものをすべて片づけずに残していたために起こったという。この時についても、川田医師は「残念ながら私だけのケースだった」としており、病院の米沢優・産婦人科主任部長は、1人での作業がミスを招いた可能性を認めている。

 日本産科婦人科学会は00年、会員に対し、体外受精などでは受精卵を厳重に識別することなどを通知している。川田医師も会員だったが、同病院には当時、今回のような事故を防止するマニュアルはなく、川田医師1人での作業が常態化していたとみられる。

 同病院では昨年秋に取り違えの可能性が分かった後、マニュアルを変えて体外受精の作業には複数であたることとし、川田医師と検査技師らで作業している。

 病院の森下一事務局次長は「県内で体外受精ができる病院が少なく、(担当医を)頼りにしている患者さんもいる。体外受精をやめさせるなどの処分は難しい」と話している。

 ◇受精卵確認の会告見直しへ…産科婦人科学会

 香川県の病院で受精卵の取り違えの可能性があった問題を受け、日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)は、体外受精の際、受精卵の確認などを厳重にするよう求めた会告について、厳格化を含む見直しを28日に開かれる理事会で検討する方針を固めた。【河内敏康】

 ◇マニュアル作り再発防止体制を…舛添厚労相

 舛添要一厚生労働相は20日の閣議後会見で「大変残念で、心が痛む。何ができるのか考えたい」と述べた。防止策については「基本的にはそれぞれの病院がきちんとマニュアルを作り、絶対こういうことが起こらない体制を作らないといけない」と語った。【清水健二】

毎日新聞 2009年2月20日 12時55分(最終更新 2月20日 13時30分)

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