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受精卵取り違え:相手夫婦に無断で中絶…病院謝罪2カ月後

 高松市の香川県立中央病院で起きた体外受精卵の取り違え疑惑で、病院は自分たちの受精卵を間違って移植された可能性のある夫婦に説明しないまま、08年11月中旬に20代女性への人工中絶をしていたことが分かった。20代女性の側が告知を望まなかったことなどを理由に挙げているが、本来の親だった可能性のある夫婦だけに病院の対応は議論を呼びそうだ。

 病院によると、誤って受精卵を使われた可能性があるのは40代の女性で、この夫婦に取り違えを知らせたのは1月25日だった。告知が遅れた理由の一つとして病院は、妊娠した20代の女性側が望まなかったことを挙げている。病院の米沢優・産婦人科主任部長(59)は「(相手が産んでほしいと望むなど)何が起きるか分からなかったからではないか」としている。

 また、40代女性の体調が優れなかったため、ショックを与えないようにしたことも理由に挙げた。

 結局、40代女性の側には、松本祐蔵院長(63)や担当医の川田清弥医師(61)らが約2カ月前に中絶手術をしたことを説明し、ミスを謝罪した。病院によると、その時、この夫婦は「残念だ」と話しただけで、非難の言葉はなかったというが、この夫婦はその後、同病院での不妊治療は受けていない。

 20代の女性側だけにミスを説明したことについて、米沢部長は「40代女性に説明して結論が出なかった場合、20代女性の体調も心配だった」としている。しかし、川田医師が取り違えの可能性に気付いてから、20代女性に説明するまで約3週間かかっており、院内ではこの間、担当医や院長を交えて会議を開くなどしていたというが、対応が改めて批判されそうだ。【椋田佳代】

 ◇受精卵の「親」の判別…12~14週目は困難

 受精卵が誰のものかを確定する方法について、沖利通・鹿児島大講師(着床前遺伝子診断)は「一般に妊娠6~11週には『絨毛(じゅうもう)生検』といって、胎盤から胎児の細胞だけ取り出してDNA鑑定することができる。12~14週の間は、胎児と母親の細胞を区別するのが難しくなり、15週になれば羊水検査で再び判別できるようになる」と話す。【河内敏康】

毎日新聞 2009年2月20日 12時33分(最終更新 2月20日 13時13分)

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