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中川財務相辞任:何度も酒に飲まれ 千鳥足で会議出席 04年改造、初閣議でも失態

 「酔って閣議に出席した」「飲み過ぎで会議に遅刻した」。17日に財務・金融担当相を辞任した中川昭一氏(55)は、過去に飲酒が原因とみられる失態を度々演じてきた。今回のもうろう会見については「風邪薬を多めに飲んだ」と述べ、会見前の飲酒を否定した。だが、酒にまつわる過去の問題は麻生太郎首相も認識していたはずで、任命責任を問う声は弱まりそうにない。

 1月28日の衆院本会議で行った財政演説。読み間違いが26カ所もあり、財務省は「風邪で体調が悪かった」(幹部)と釈明に追われた。だが、自民党国会議員の秘書によると、中川氏は前日に東京都内で酒を飲みながらテニスをし、持病の腰痛を悪化させていたという。

 昨年10月に政府が「緊急市場安定化策」を決定した際は、会見が午前9時の開始予定から15分ほど遅れたうえ、対策の具体的中身に触れず、正式な発表が昼にずれ込んだ。

 このためバブル後の最安値を更新していた株安の流れを止められず「危機対応に甘さがある」(アナリスト)と批判が集中。一部週刊誌が「前日の飲酒が原因で会見に遅刻した」と報じると、中川氏は「会見時間前に登庁していた。(事務方からの)レクチャーが長引いただけだ」と抗議する騒動に発展していた。

 自民党政調会長時代の06年には、都内のホテルで開かれた与党幹事長・政調会長・国対委員長会談に遅刻して現れた。酩酊(めいてい)状態で、千鳥足で歩き、ホテルの柱にぶつかりそうになった。見かねたSP(警護官)に抱きかかえられて会場に向かった。

 経済産業相当時、04年9月の小泉政権の内閣改造では、お別れ会見後に経産省を出て別の場所で酒を飲んだ。ところが再任され、あわてて官邸に向かい、酔ったまま初閣議に臨んだ。

    ■

 17日午後7時、中川氏はこの日2回目の辞任会見に臨んだ。疲れ切った表情。辞任理由について「08年度補正予算の関連法案と09年度予算を通すため」と繰り返し、酒については「体調からすれば、とても飲む気分になれない」と話した。

 ◇「国益損ね、当たり前」

 中川昭一財務・金融担当相の辞任表明には、与野党双方の国会議員からも厳しい指摘が相次いだ。

 自民の山本一太参院議員(51)は「あの会見が世界に配信されたのが痛い。党にとってマイナスイメージだ。麻生総理の判断だが、党内には『これでは選挙が戦えない』という声もある」と衆院選への影響を心配した。

 同じく自民の平将明衆院議員(41)は「予算案の衆院通過後に辞めるという理屈はおかしく、辞表提出は当然だ。中川さんの緊張感の欠如が原因なのだから、麻生総理にも任命責任がある」と執行部を批判した。

 一方の野党。中川財務相の父、故中川一郎氏の秘書を務めたことがある新党大地の鈴木宗男衆院議員(61)は「昨年11月に地元の式典で会った際も、あいさつの内容が的外れで、どうしたのかなと感じていた。豪放磊落(ごうほうらいらく)な一郎先生だったら『おれより大物だ』とおっしゃるかもしれないが、世界の経済危機を論じる場での失態だけに、辞任せざるを得なかったのでは」と話した。

 民主の笠浩史衆院議員(44)は「国益を損ねる失態で日本の恥。内閣の危機管理がなっていないことの証明だ。『辞める』と言っている大臣が予算について答弁するのは筋が通らず、即辞任は当たり前だ」と語った。【篠原成行】

 ◇ダルマに黒い涙--祝6選、酔って墨はみ出し

 00年6月の衆院選。6選を決め帯広市内の選挙事務所に現れた中川氏は酒に酔い、ふらふらとしながら万歳三唱。必勝祈願のダルマに目を入れる際も筆に墨をつけすぎて大きくはみ出し「黒い涙」を流すダルマの目になって周囲を慌てさせた。支持者らには「友達が来ていて夕方から飲んでいた」と話した。

 十勝管内本別町で05年夏に開かれた後援会パーティー。複数の関係者によると、中川氏は支持者約2000人が集まる中、酩酊(めいてい)状態で現れた。10分間を予定していたあいさつはろれつが回らずに、数分間で終了。同席していた同管内の首長から「ちゃんとあいさつした方がいい」と一喝されたという。

 地元道議は「中川氏はああ見えて『ガラスの心臓』の持ち主で、選挙の投開票前日は不安が募るのか、酒なしではいられなかった」と指摘。別の道議は「中川氏はビールが嫌いで以前はウイスキーや日本酒を好んでいたが、ここ数年は酒に弱いことを自覚してか焼酎をソーダで割るなどしていた」と証言する。

 また、08年11月29日には、十勝管内中札内村立中札内小学校体育館で開かれた道路開通式に出席。昼食中にたばこを吸い始め、一部出席者は「小学校の体育館でたばこを吸うのはいかがなものか」とまゆをひそめた。後援会関係者は「要職を務めるようになって、古い付き合いの人を除いて意見できる人がいなくなった」と漏らした。【鈴木勝一、横田愛、田中裕之】

毎日新聞 2009年2月18日 北海道朝刊

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