社説ウオッチング

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

社説ウオッチング:「かんぽの宿」売却 朝日、消えた総務相批判

 ◇日経、「契約」続行の主張で突出

 日本郵政(西川善文社長)は、「かんぽの宿」70施設を一括譲渡するオリックス不動産との契約を白紙撤回した。同社は16日に総務省に詳しい経緯を報告する。鳩山邦夫総務相が契約見直しを求める考えを表明してから1カ月余り。この間、売却、入札への疑問・疑惑が次々と明らかになり、日本郵政が契約撤回に追い込まれるという異例の経過をたどった。

 この入札・売却問題を論じるにあたり、各社は事態の推移に合わせて複数回の社説を掲げた。三つの時期に分けて見てみると--。

 <第1期>総務相が突然、見直しを打ち上げたのが1月6日。問題としたのは、規制改革・民間開放推進会議議長で郵政民営化に賛成だった宮内義彦氏が率いるオリックスへの売却であり、不動産価格が下落する時期の売却で、一括譲渡であることだった。譲渡額が約109億円であることも判明。この後に日経、産経、朝日、毎日の順で社説が掲載された。

 <第2期>70施設の施設費が約2400億円だったこと、旧日本郵政公社が1万円の評価で売却した物件があったことなど、入札・売却への疑問が広がった。29日には西川社長が譲渡凍結と検討委員会の設置を表明した。1万円の物件が6000万円で転売されていたことも判明する。毎日、朝日、日経、産経が2回目、読売、東京が1回目の社説を掲載した。

 <第3期>2月に入り、最終入札で応札したのはオリックス不動産1社だけで、2社目の金額は日本郵政の推計値だったこと、売却対象だった東京都世田谷区の「レクセンター」が入札の最終段階で除外されていたことなどが判明し、一連の入札に対する疑惑が深まった。最終的に譲渡の白紙撤回が決まる。毎日、朝日が3回目、読売が2回目の社説を掲げた。

 ◇毎日、「情報公開」で一貫

 各紙の主張は、どういう経過をたどっただろうか。

 まず第1期。毎日は「売却などの際の手続きを国民に広く示し、そのプロセスもできる限り公表することが望ましい」と主張し、与党に民営化企業の資産売却について考え方を示すよう求めた。

 これに対し、朝日、日経両紙は「理由が不明確で納得できないのは、鳩山氏の『待った』の方ではないのか」「西川社長が説明した内容は、しごくもっともに思える」(ともに朝日)、「総務相の姿勢は到底納得できない」「所管大臣が入札結果に堂々と介入するのは常軌を逸している」(ともに日経)などと、総務相を強く批判した。総務相が疑問の根拠を示さないまま契約見直しに言及したことなどが批判の理由だが、日本郵政への注文や指摘はなく、総務相批判一色となっている。一方、産経は総務相批判に力点を置きつつ、日本郵政の説明不足も指摘した。

 次に、売却への疑問が浮上した第2期。毎日は「政治問題にまでなっている現状では、オリックス不動産への売却凍結は、当然の措置だ」と主張し、施設の査定や譲渡方法を見直し、結果を国民に公表するよう改めて要求した。読売、産経、東京も入札経緯の公開、情報開示などを日本郵政に求めた。

 総務相批判に終始していた朝日、日経はどうか。朝日は引き続き総務相に対する批判姿勢を維持しつつ、「日本郵政にも注文がある。売却が問題視されてからも、入札についての情報をきちんと出さず、疑念を膨らませる結果になった」と、日本郵政側も批判した。第1期の主張から論調をやや修正したように映る。

 一方、日経は「総務相の主張は説得力を欠く」と、相変わらず明確な根拠を示さない総務相を批判し、日本郵政が譲渡凍結を表明したことについて「何とも不可解だ」「『公明正大な手続きだ』といいながら、満足な説明もなく簡単に折れた日本郵政の西川善文社長の姿勢にも問題がある」と批判した。合理的説明のないまま総務相の意に沿う決断をしたのが問題だという主張である。現在の契約を維持すべきだとの姿勢だ。

 ◇読売「契約撤回は当然」

 そして、さらに入札に関する疑惑が深まった第3期。毎日は譲渡契約の白紙は「当然」とし、国民への情報公開とともに、70施設の「個別施設ごとの譲渡」や、法律で決められている12年9月末までの廃止・売却の「期限延長」の検討などを提言した。

 最新の朝日の社説からは総務相への批判が消えた。代わって、入札に「謎めいた部分が出てきた」とし、入札への「疑念」や白紙撤回の経緯などについて「納得できる説明」を日本郵政と西川社長に求めた。読売は「契約を撤回したのは当然」とし、入札の経緯や売却価格などについて「日本郵政は洗いざらい報告し、説明責任を果たす必要がある」と主張した。

 今回のかんぽの宿売却をめぐる総務相と日本郵政の動きには、入札・売却のあり方のほか、郵政民営化問題や総選挙を控えた政局への思惑も絡んでいるとの見方が強い。一連の社説は、それらを考慮しながら、事態の骨格が判明する前に論評する難しさを浮き彫りにした。【論説委員・岸本正人】

毎日新聞 2009年2月15日 東京朝刊

 

特集企画

おすすめ情報