日本の男性学を研究してきた伊藤公雄・京大大学院教授は、「男性に比べ女性が元気なのは国際的な流れ」とした上で、日本独自の問題の背景を指摘する。
伊藤教授によると、1970年代に入ると、国連が国際婦人年(75年)を定めて女性の地位向上を積極的に働きかけるなど、女性は意欲的に成長するようになった。しかし、日本以外の国々は経済活動も男女で支える社会になったが、日本では男性は家庭のことを顧みずに労働に没頭し、女性は働くことを抑えて男性を支える仕組みを取った。
その結果、核家族化で母親だけが育児をしたため、異性で扱い方が分からず過干渉で育てられた男性たちが、うまく自立できない状況が生じたのだ。本来身近な男性から学ぶはずの、弱さを含む現実に即したモデルから、学習して成長する機会を得られなかったのだという。
伊藤教授は「そうした現実にもかかわらず、男性はいまだに『男は女をリードしなくては』『女性や子どもを養わなくては』といった、すり込みによる幻想を捨てられていない。その結果、現実の自分たちや生き方と、幻想とのギャップの大きさに、すごくジレンマが生じている」と話す。
では、男性が生きづらさから解放されるには、どうしたらいいのだろうか。
竹中さんはこう言う。「女性の被害部分が主な問題で、男性の大変さは問題じゃない、という発想ではなく、男性のしんどい部分は、女性が困っていた部分と同じくらい大変だよ、という発想を、共有する必要があると思う。考え方が変わらないと、報道や法律なんかも変わっていかないですから」
毎日新聞 2009年2月19日 東京夕刊