【社会】西尾市幹部「全く知らない」 市長逮捕で2009年2月19日 朝刊
「何が起きたのか」−。18日夜、受託収賄容疑で愛知県西尾市長の中村晃毅(こうき)容疑者(71)が逮捕され、市役所に衝撃が走った。名古屋地検特捜部はこの日朝から市庁舎の市長室などを家宅捜索。夜になって係官とともに姿を見せた中村容疑者は「何もしていない」と強調した。逮捕を受けて19日未明に会見した市幹部は「市民に申し訳ない」と陳謝。にわかに発覚した収賄容疑事件に市民も驚きを隠せず、動揺は収まりそうにない。 「逮捕は誠に遺憾」。中村容疑者の逮捕を受けて、西尾市役所で19日午前1時前から開かれた、緊急記者会見。大竹茂暉(しげき)副市長が苦渋の表情を浮かべながら、頭を下げた。 家宅捜索があったことから急きょ会見を開いて、そのわずか3時間半後という2度目の会見。最初の会見では、「もし私が出られなかったら、代わりに行事に出てほしい」と中村容疑者から伝えられたなどとし、「突然の事で驚いているが内容が確認できていない」と困惑した表情を見せていた大竹副市長ら。 それだけに、逮捕には表情も一段とこわばった。報道陣の質問に、贈賄側業者が市長室に出入りしていたことについては「全く知らない」と、幹部らは声をそろえた。 名古屋地検特捜部は、18日午前9時30分ごろから捜索に着手。係官らが庁舎3階の市長室はじめ建設部、市民部などに立ち入った。市長室がある秘書課は立ち入り禁止となり、その前のロビーに続々と報道関係者が集まった。 異様な雰囲気に「何があったの」と尋ねる市民も。市職員らは「何も聞かされていないから」と戸惑いを見せるばかりだった。 一方、贈賄容疑で幹部2人が逮捕された愛知県吉良町の人材派遣会社「大成閣」にも、夕方から数人が2階建ての事務所内を約3時間にわたって捜索、帳簿類や領収書などを詰めた段ボール箱を次々と運び出した。従業員の男性は「状況がよく分からない。社長がいないので答えられない」と話すだけだった。 ◆中村容疑者は全面否定「ぼくには全然分かりません」「(わいろは)受け取っていません」−。 名古屋地検特捜部の係官に付き添われ、愛知県西尾市役所を出た中村容疑者は、詰め掛けた報道陣の問い掛けに、疑惑を全面的に否定した。 朝から3階の市長室にこもりきりだった中村容疑者が姿を見せたのは午後7時20分ごろ。グレーのスーツのポケットに左手を入れ、笑みを浮かべて市長室を出た。 午前中から続いた家宅捜索に疲れを見せることなく、しっかりした足取りで地検特捜部が用意したミニバンに向かった。もみくちゃにされながら何度も疑惑を否定。家宅捜索の終了を待っていた一部の市職員もその様子を心配そうに見守った。 ◆「ルール守ること信条」 支援者ら驚き「気さくで人間味にあふれる人なのに…」。中村容疑者逮捕の報に、支援者や知人らは驚きを隠さない。 「子どものころから正義感にあふれる人間だった。なぜこんなことに」。中村容疑者とは小中高校の同級生で、後援組織の代表を務めた中根正治さん(71)は言葉を失った。 中根さんによると、中村容疑者はおとなしい性格ながら、リーダーに推される存在。ルールを守ることを信条にし、2005年の市長選でも「マナーにも気を使わなきゃだめだ」と細かく支援者に指示を出すほど。最後に会った時には、体調を崩しがちな中根さんに「体は大丈夫か。自分のペースでやってくれ」と声をかける優しさも見せたという。 書をたしなみ、カラオケも上手と評判だったという中村容疑者。市の幹部は「企業誘致に熱心で、財界との付き合いを大切にしていた」。若手にも評判はよく、ある職員は「気さくな人で、気軽に声を掛けてくれた。まさか逮捕とは」。 ただ「ワンマンな面もあった。トップダウンで決めることがままあった」との指摘も一部で漏れる。市民の中には「何かを頼まれて、その場で『できない』とは決して言わなかった。それがあだになったのかも」という声や、「新庁舎建設でも黒いうわさがあり、昨年秋には事務用品購入をめぐる談合事件も発覚。心配していた」との指摘もあった。
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