県医療制度改革推進本部(本部長・達増拓也知事)は17日、県立病院・地域診療センターの無床化を柱にした県医療局の新経営計画を表現など一部修正し、了承した。無床化の時期や対象施設などは最終案通りで、4月に実施されることが決定した。県議26人や地元首長、住民団体は実施を凍結し協議を続けるよう求めており、反発は必至だ。
新計画では、夜間・休日に当直看護師を当面、配置し、地元医療関係者らと協議する場も設ける対応策を盛り込む。18、19の両日中には正式に決定する。
このほか、地域説明会などでの意見を受け、▽入院が必要な患者の受け入れ先確保▽無床診療所と基幹病院を結ぶ交通手段の確保▽県立病院の運営について市町村との連絡協議会の設置--を示した。田村均次局長は「医師不足は大変な状況だ。地元での経過措置も最善を尽くす」と理解を求めた。
新経営計画は、県立沼宮内病院と▽紫波▽大迫▽花泉▽九戸▽住田--の5地域診療センターの無床診療所化のほか、8病院で病床を削減。09、10年度に計396病床を減らし、経営の適正化を図るなどとしている。【山口圭一】
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■解説
県立病院・地域診療センターの無床化が、2月県議会を待たずに事実上、決定した。策定過程や県医療局の姿勢に最後まで疑問が残る。
医療局は医師不足と経営悪化を理由に掲げる。確かに県立病院では、04~07年度で定年以外に計140人が退職。「安易な救急利用などが過酷な勤務を招いた」と分析するが、患者に責任を押しつけたようにも聞こえる。
高橋博之県議が1月、医療局の常勤医に実施したアンケートでは、「本庁が医療現場を分かっていない」などの不満が寄せられた。全国的な医師不足は、ここ1、2年で起きた問題ではない。現状を招いた医療局自身も検証する姿勢が必要ではないだろうか。
計画の策定過程にも批判が集まった。非公開で議論し、案を公表したのは計画実施の約4カ月前。その後、住民らを対象にした説明会や懇談会で、地元医師から入院機能を維持するために当直協力の申し出もあったが、反映されなかった。最後の懇談会から最終案提示まで約1週間。「無床化ありき」という印象がぬぐえなかった。
最終案を示した今月10日、地元首長らの「空きベッドの福祉施設への活用と言うが、検討する材料もなかった」との苦言に、医療局幹部は「もっと早く言っていただければ、いくらでも示した」と返した。自治体に責任を転嫁するような発言に首をかしげた。
地域医療に携わる医師や住民からは、無床化が与える悪影響を懸念する声が根強い。医療局は無床化後1年間をめどに地元市町村、医療・福祉関係者らと協議する場を設け、地域の個別課題を話し合う考えを示した。2月県議会でも論点になるだろう。医療局には地域の声に耳を傾け、真摯(しんし)に応える姿勢が求められる。【山口圭一】
毎日新聞 2009年2月18日 地方版