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エルサレム賞授賞式で村上春樹氏が「ガザ侵攻」を批判

佐藤弘弥2009/02/16
 村上春樹氏(60)は、2月15日、イスラエルで行われた世界的な文学賞エルサレム賞(1963年に創設)の授賞式後のスピーチで、ガザ侵攻の非人道性を極めて厳粛な態度で批判した。

 この賞は過去に、バートランド・ラッセル(イギリス)、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(アルゼンチン)、アーサー・ミラー(アメリカ)などが受賞した、今や世界的な権威となりつつある文学賞だ。

 スピーチの中で、村上氏はパレスチナを「壊れやすい卵」に例え、イスラエルを壁に擬えた。その上で、「私はどんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、卵の側に立つもの」ときっぱりと語った。その表情からは、文学賞を受賞した喜びよりは、イスラエルの市民の潜在意識の奥にある人間の良心に訴えかけるという祈りのような思いが強くにじみ出ていた。

 世界中の注目を集めるイスラエルとパレスチナのいつ果てるともない諍いは、61年前(1948)のイスラエル建国時から始まった。その後、先祖伝来の土地を奪われたパレスチナの人々は難民となり、エレサレムに建国の夢を果たしたユダヤ教徒の人々と激しく対立し、暴力の連鎖が繰り返されることになった。

 戦争の前では文学は無力かもしれない。しかし村上春樹氏の文学が世界中の言語で翻訳され、ヘブライ語や英語で、イスラエルの人々がこれに癒しと共感を覚え、優れた文学として、最高の賞を与えたことは事実だ。

 日本の一部のファンたちからは、国際的な非難が起きているガザ侵攻を続けるイスラエルから村上氏が賞を受けるのは適切ではない、辞退すべきでは、という声が湧き上がっていたと聞く。しかし村上氏は、その声の遙かに上を行く思考をもってこの賞を受賞し、きっぱりとイスラエルの軍事行動を批判したことは称賛に値する態度だった。イスラエルの人々の良心に、彼の深いメッセージが伝わることを祈りたい。

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[41383] イスラエルとパレスチナが「コンステレーション」される日を期待したい
名前:佐藤弘弥
日時:2009/02/17 23:54
小林さん

どうしたら、イスラエルとパレスチナに平和の日が訪れるのか。これは本当に難しい問題だと思います。

ともかく、この難しい問題を抱えるイスラエルに行って、賞を受けながら、受けた人々の国の有り様を批判するということを、堂々と行った村上氏の態度は、本当に立派でしたね。私にはジョン・レノンの「イマジン」の思想が見えました。

また唐突ですが、ユング心理学の言葉に「コンステレーション」という言葉を思い出しました。これは単純に言えば「星座」のことですが、ユング心理学では「布置」あるいは「配置」と訳されます。星座で言えば、ひとつひとつの星が全体として、「白鳥座」とか「小熊座」のような形を形成しているのです。

この「コンステレーション」の思考は、「ひとつ」の事柄で、物事を判断するのではなく、配置された「全体」でその意味を探るということがあります。この「コンステレーション」論は、ユング心理学の世界的な権威である河合隼雄先生が「最終講義」を行ったことでも知られるテーマです。

私は、ひとつの比喩ですが、イスラエルとパレスチナというふたつの異なった国が、ひとつの星座のようになって、「コンステレーション」されればいいと思いました。
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[41375] 戦後の日本文学の世界的存在意義は平和主義と人道主義にあり
名前:佐藤弘弥
日時:2009/02/17 22:51
山口さん

こちらこそご無沙汰しております。

私は宮田記者の素晴らしい記事(フィレンツェで行われているという貸付制度)に寄せた山口さんのコメントを拝見し、もの凄く嬉しく思いました。私もこの地域限定で、少額貸し付けを行うというのは、「マイクロクレジット」とも違い、日本の「結い」のシステムのようでもあり、興味を持って読んでいたところでした。「お帰りなさい。山口さん」とコメントしたいところでしたが止めておりました。

さて、御著書をお送りいただいた御礼も申さぬままで失礼しております。あのご高論の重要なふたつの視点「多様性の受容」と「日米文化比較差」は、とても印象に残りました。妙な言い方になりますが、「?!」というショックがありました。そこで顕在意識で無理に消化せず、潜在意識に未処理にて留め置き、考え続けております。そこがファンタジーの本質だと思うからです。

私の認識論の中に「場所性と時代性による思考限界」という観念があります。この限界を思考の過程で越えるヒントが山口さんの著書の中にあるのかもしれないと考え始めております。アメリカ社会は、昨年秋、バラク・オバマという若いリーダーを選び出しました。これはアメリカ社会にとって、ダイバーシティ(多様性の受容)の実践でした。

オバマの勝利は、アメリカ独立宣言の「すべての人間は平等に造られ、幸福を追求する権利を有する」というダイバーシテイの哲学を、「チェンジ」という言葉に置き換えたことかもしれないなどと思っています。

オバマの成功は、人種、宗教の違うさまざまな都市に移り住み、苦労を重ねたことにあると思います。オバマ自身の人生が、「デイバーシティ」そのものという言い方もできるかもしれません。そこで大事なことは、違いを探る「比較」の思想です。人間は皆違うように造られている。自己と他者はどのように違うのか、その違いは、どこで生じたのか。ユダヤ教とイスラム教は、どう違うのか。ふたつの宗教の神はどう人間を見ているのか。神は人間を幸福にできるか。それとも神は人間に大義のために戦えと強いるのか。

世界的な音楽家でイスラエル人のダニエル・バレンボイムとパレスチナ系アメリカ人のエドワード・W・サイードは、この違いを認め合いながら、どうしたらイスラエル人とパレスチナ人が、平和に暮らせるかを真剣に話し合い、ついにイスラエルとアラブ系の若い音楽家を集めて管弦楽団を組織しました。

ガザ侵攻は、暴力の連鎖で不幸な事件ですが、そんな中で、日本人である村上春樹氏が、彼の文学の根底にあるヒューマニズムが評価されて、エルサレム賞に選ばれたことは、とても素晴らしいことでした。で、その授賞にもまして、嬉しかったのは、選び抜かれた表現で、ガザ侵攻という暴力を明確に批判したことだと思っています。日本の存在意義は、第二次大戦の悲惨な戦争暴力経験を世界に伝え続けることだと思います。

その役割を戦後の日本の文学者たちは、世界の最前線に立って担ってきました。大岡昇平も小田実も開高健も大江健三郎も、日本人の戦争被害者たちの集合的無意識が彼らの文学の背景にはあると思います。もちろん村上春樹氏もその中のひとりです。

今後は、日本は外交においても、イスラエルとパレスチナの双方に、影響力を持ちつつ、ふたつの社会に平和の日が訪れるための努力を、アメリカのスタンスとは別に展開する必要があると思います。

最後になりましたが、スーザン・ソンタグの情報、ありがとうございます。サイードといい、ソンタグといい、小田実といい、心優しい平和主義者が、若くして逝くのは、寂しく悔しい限りです。今後とも、コメントなど寄せていただきますよう、よろしくお願いします。
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[41335] そうでしたか
名前:小林光長
日時:2009/02/17 04:57
村上春樹氏を、名前以外何も知らなかった私としては、今後
彼の人と成りを、今回の彼の行為を頭に刻んだ上で評価してゆきたいと思います。
その国から重要な賞をもらいながら、その授賞式で、その国の根本的な誤りを指摘するということは、歴史的に見てもほとんどありえないのではと思います。それだけに今後の彼の言葉の重みを噛み締めてゆきたいと思います。
私にとってのイスラエルとパレスチナの長期に亘る戦いは、たとえて言えば、ありと像のそれです。卵と壁というのも言い得て妙です。要するにまず戦いが成立しない力関係であるということです。(これはちょうどキューバとアメリカの関係についてもいえます)そして最大の問題は”あり”の側に根本的には戦わざるを得ない理由と正義が、像の言うそれよりもずっと高らかに存在するということです。
ジャンジャン誌上で、論者からたびたび、両者が対等という前提でこの戦争の”喧嘩両成敗”的なコメントがたびたびありましたが、私に対してはまったく説得力がありませんでした。
いつもこの件に関しては、もやもやした物が頭から離れなかったのですが、今回の佐藤さんの記事を読み、ようやく私の頭もすっきりしました。
小田実氏亡き後、社会的かつ世界的な目を持った日本の作家として(もちろん両者の作家としての寄って立つ世界観、作風、影響力などまったく違うでしょうが)私の心の中で注目してゆきたいと思います。(実は池澤夏樹氏も私の注目している作家ではあります)
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[41330] 感想
名前:山口一男
日時:2009/02/17 00:56
佐藤さん
   お久しぶりです。村上氏の行為は大変立派なことだと思います。米国作家の故スーザン・ソンタグも確か同賞を受けたとき、授賞式でイスラエルのパレスティナ政策を厳しく批判しました。彼女は、9:11以来一時は米国世論を敵に回しても前ブッシュ大統領のイラク政策などをアメリカの覇権主義として批判続け、惜しくも2004年亡くなりました。以下は、彼女についての日本版ウィキペディアサイトです。

  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B0
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