母親世代に比べて、体格がよくなった小学生の女の子たち。それに伴い、ブラジャーの着用年齢が早まっているが、「恥ずかしい」と拒んだり、サイズが合わない製品を身に着けている女の子もいるようだ。体形が急に変わる娘に、どのような下着を選べばいいのか戸惑う親も多い。【木村葉子】
ワコール人間科学研究所の2000年の調査によると、ブラジャー着用率が6割に達するのは母親世代が中2だったのに対し、娘世代は小6と2年も早まっている。
また娘世代の「胸がふくらみ始めている割合」は小4で2割以上、小5で6割以上、小6で9割に達していた。一方でブラジャー着用率は小4では1割未満、小5で3割、小6でも6割にとどまった。胸の成長に比べ、ブラジャーの着用開始時期が遅い女の子が多いことが分かる=グラフ参照。
原因について、ワコール宣伝企画課セミナー啓発担当チーフの小林知美さんは「母親自身が着用し始めたのが中学生ぐらいの人が多く、小学生では早いと思っているようだ」と分析。小中学生対象の下着講座の講師も務める小林さんは「成長する胸を守り支えるというブラジャーの役割を、親があまり認識していないのではないか」と話す。
小中学校に下着の出前授業をしているグンゼの和佐谷(わさたに)仁美さんは、「ブラジャーをしたくない」という子には「体の成長は素晴らしいこと。自分をいとおしむ気持ちを持ってほしい」と言い聞かせる。一方で、ブラジャーが必要なのに親に買ってほしいと言えない子も多い。「子どもの体の状態に無頓着な親が増えているのではないか。下着選びを通じて、ぜひ親子のコミュニケーションを図ってほしい」
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「下着をきちんと身に着けることはマナー。そう子どもたちに教えています」と話すのは東京都足立区立上沼田小の養護教諭、渡辺みどりさん。渡辺さんは前任校にいた5年前から、児童を対象にした独自の下着教育を実施している。運動会で、下着を着けないため胸が目立つ状態で動き回る女の子を見たのがきっかけだ。
発育測定の待ち時間などを活用し、手作りの着せ替え人形を使って、プライベートゾーン(水着でかくれる場所)は他人に見せてはいけないことや、下着の選び方を説明。高学年の女の子には「胸が大きくなってきたらブラジャーを着けよう」と指導する。
「最近は親子で入浴する家庭が減っているようだ」と渡辺さん。そのため、親が子どもの体形の変化に気づきにくい。時には児童に直接、着用を勧めたり、母親に注意を促す。「親子で下着について話すのは気恥ずかしさもある。お母さん自身、どうしたらよいかわからないという声を聞く」。今後、保護者向けの勉強会なども検討しているという。
子どものブラジャーを選ぶ目安を、前出の小林さんに聞いた。ワコールはジュニア向けとして(1)乳頭部分が目立ち始めるころ(2)胸全体が膨らんできたころ(3)大人に近づいてきたころ--の3段階に分け商品を展開している。
(1)は乳頭が服や下着にこすれて、ちくちくしたり痛いことがある。胸全体を覆うハーフトップのブラジャーや胸の部分が柔らかい素材で二重になったキャミソールがよい。
(2)は体操服やTシャツの上から胸の形がわかるようになるころ。トップ(ふくらみの一番高いところ)とアンダー(ふくらみのすぐ下)の差が10センチ以上が一つの目安だ。成長が進む時期なので伸縮性のある生地で立体的な裁断のものがよい。「からかわれる」などの理由で、女の子が着用を一番嫌がるのもこのころ。上にキャミソールなどを着れば、透け防止になる。
(3)の時期は、柔らかい樹脂製ワイヤ入りで、包み込むように支えるものを。成長期の子どもの胸は丸いおわん形で、脂肪が少ない。大人用のブラジャーは、脇に流れがちな胸を寄せて上げる機能があるので適さないという。
小林さんによると、初経の時期と胸の成長にはかかわりがある。(1)は初経より1年以上前、(2)は初経の1年前後、(3)は初経から1年以上たったころが目安だ。「初経の用意をする1年くらい前から、ブラジャーの必要性を理解し、準備してほしい」と話す。
毎日新聞 2009年2月17日 東京朝刊