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もう一つのこだわりが、堅牢性だ。
「社内の検査基準は、B5のノートでもA4のノートでも変わらない。クオリティ、堅牢さを維持しつつ小型化を図るのは苦しい作業だが、開発側のこだわりであり、使命でもある」と岩川は語る。
サイズやクラスに関係なく、ThinkPadにはトーチャー(拷問)テストと呼ばれる検査が課せられる。力が加わってボディが割れても、液晶パネルは生きているか。ボディの上に座る。ボディを投げる。落とす。踏みつける。これらのテストも、けっして宣伝目的の思い付きではなく、ディパックに入れたまま椅子に座ってしまうといったシチュエーションを想定している。
「テストの目的はお客様のデータを守ること」という北原は、我々の目の前でT20のキーボード部分に水をかけてみせた。
「コーヒーなどをこぼしてしまっても、少量であればバスタブ状になったキーボードの底部にたまって、メインの基板上にはこぼれない。傾けて排水するための穴もある。キーボードは交換しなければならないかもしれないが、最低限、お客様のデータは守りたい」
強度、堅牢性に関する要求は、片方で製造やメンテナンスの手間の問題に直結する。キーボードを簡単にはずせるか、ネジを何本使うかなど、設計上のせめぎあいが行われ、そこから筐体の素材などが選択されていく。近年は、素材に混合物を入れない、プラスティックに色を塗らないなどの方法で、リサイクル性を高める設計や製造方法が採用されてきている。たとえばカーボンファイバーの筐体は、成型時に縞目が出るのを避けるために製法の技術革新が行われた。
これまでのThinkPadのイメージだった「桃の質感」のつや消しラバー塗装に変わり、アルミコーティングのs30にも、こうした技術革新の成果が搭載されているのだ。
ThinkPadの 成功以降、IBMの製品ラインが序々に黒に変わってきた。それまでは、IBMといえば「ブルー」のコーポレートカラーがシンボルだった。汎用機でもアイボリーやブルーが主体だったが、今ではデスクトップのAptivaや大型機にも黒が使われている。もともとブルーだったロゴマークも、カラー液晶を搭載したThinkPadでは、ボディの黒に映えるように、光の3原色(青、緑、赤)を配したバージョンが使われるようになった。黒はまさしくIBMのコーポレートカラーとなった感がある。
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