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「彼は社員ではないけれど、我々社員よりもずっとIBMについて詳しい」と語るのはThinkPadシリーズのデザイン全般を担当するデザイン・マネージャー/部長の山崎和彦だ。彼のデスクの上には、ThinkPadシリーズが受賞したグッドデザイン賞のはじめたくさんのトロフィーが並ぶ。大和研究所にある山崎の部門は、ThinkPadのプロダクトデザインだけでなく、周辺機器から包装などのグラフィックデザイン、さらにはWebの制作まで、ThinkPadに関連するデザインと名のつくすべてを担当し、そのブランドカラーをいわば人的にまとめている。「やっていないのは、コマーシャルの制作くらい」(山崎)という。
その山崎がサッパーのデザインを語る。
「サッパーはテレビ、時計、ケトル、ライトなどいろいろな製品のデザインをしているが、同じ製品を2度デザインすることは、ほとんどない。つまり、一つの製品に最高のデザインは、二つないという意味だろう」
そうしたデザインの中にも、一貫したスタイルがあり、それがThinkPadまで通底している、という。
「本人が言っているように、使わないときは極めてシンプルな形。基本的には『箱』になっている。テレビの場合は消しているときは、モニター面もわからない立方体だが、スイッチを入れると、テレビになる。タグホイヤーのストップウォッチや置時計なども同じ。普段は箱だが、それを開けると、まったく違う世界が開ける。そのイメージの対比が、彼のデザインのキーだ。最初のラップトップ・コンパーティブルでもそうだし、ThinkPadで言えば、バタフライのようなものは、その典型と言えるだろう」
シンプルさと多様性のコントラスト。黒とさまざまなカラーとの対比。そしてもしかしたら休息の空間とワークプレイスの変化。同じモノが、全く違う印象を与えること。ThinkPadのデザインの、シンプルさと豊穣な印象の両立は、たぶんここに秘密があるのだろう。 |
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