ベトナムを公式訪問した皇太子さまは、ハノイや古都フエなど行く先々で歓迎を受けた。1週間の日程だったが、両国のきずなはより深まったと言える。ただ、日越関係者には「大きな戦禍に見舞われた同国の歴史にも触れてほしかった」との声があり、今後、こうした要望を交流に反映していく努力も求められる。
「おばあさん、おいくつですか」。中部の町ホイアン。皇太子さまは、落花生を売っていた女性にきさくに聞いた。女性は「82歳ですよ」と笑顔で答えた。皇太子さまは30度近い暑さの中、汗をふきつつ数百メートル歩き、大勢のベトナム人に囲まれた。盲学校を併設するハノイの小中学校では、予定の時間を超えて生徒らに話しかけた。日ベトナム特別大使で俳優の杉良太郎さんは「子どもたちは大喜びだった」と振り返る。
一方で、三十数年前までは国全体が戦場となり、多くの犠牲者が出たベトナム戦争に触れる場面は、ほとんどなかった。日越関係者は「戦争の傷跡を直視する視察先も組まれてよかった。あるがままのベトナムを見ていただきたかった」と残念がった。【真鍋光之】
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