【カラカス16日時事】ベネズエラのチャベス大統領が15日の国民投票で大統領再選の制限撤廃を勝ち取ったことで、「終身独裁」に対する懸念が強まっている。政敵を徹底攻撃するチャベス氏の手法は社会の富裕層と貧困層の分断を一層深め、国際的な金融危機で財政が悪化する中、強権政治が急進化する可能性も出ている。
チャベスか否か−。今回の国民投票でも、権限拡大を目指した2007年の改憲国民投票と同じく、深刻な国論分裂が露呈した。運転手ラファエル・フィゲレロさん(40)は、「以前は支持したが『チャベス派でなければ人間でない』かの態度に嫌気が差した」と顔をしかめる。チャベス氏は勝利宣言で「皆が兄弟のように生きる社会主義」を訴えたが、選挙戦では反大統領派を「うそつき」と罵倒し続けた。国立シモン・ボリバル大学のオマル・ノリア教授(社会科学)は「彼の政治は、敵をつくって対立する構図で成り立つ。政権が続く限り分裂は深まらざるを得ない」と指摘し、国民和解への配慮がない手法を批判した。
今年で10年目を迎えたチャベス政権はこれまで、無料診療所などの大規模な社会公共投資で、支持基盤の貧困層に大盤振る舞いを続けてきた。しかし豊富なオイルマネーは、原油価格が最高値の4分の1に急落、財政の逼迫(ひっぱく)が予想されている。12年の大統領選を念頭に置けば、インフレ対策など成果を出しにくい政策は先送りされる可能性も高い。
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