大学時代、卒業論文の発表で同級生が電話帳ほどの厚さの論文を手に現れた。「研究熱心だな」と驚いたが、中身は参考文献の丸写し。指導教官は「盗用だ」と詰責した。
最近、卒論や読書感想文で、ネット上の文章を丸写しする事例が多発しているという。文章表現に悩まず、容易に字数も稼げるが、その行為に何の抵抗感もないのだろうか。
医療や伝統芸能など専門性の高い取材では、何度も質問し、表現も悩みながら原稿を書く。取材を放棄し、提供資料を丸写しした記事は読者に対する背任行為だ。原稿が下手で、日々上司から厳しい指摘を受ける私だが、正確で分かりやすい記事を書く記者になるため安易な道は進みたくない。【松田栄二郎】
〔播磨・姫路版〕
毎日新聞 2009年2月16日 地方版