<平和に貢献する 世界を結ぶオリンピック・パラリンピック>。16年夏季五輪の招致を目指す東京都が「大会理念」に掲げたのは「平和」だった。理念を盛り込んだ立候補ファイルが発表された13日、改憲派の論客として知られる石原慎太郎知事も、現憲法に一定の評価をする姿勢を見せた。いささか唐突な印象はぬぐえず、今後の活動の位置づけも、はっきりしない。【木村健二、江畑佳明】
「日本でオリンピックを開催することは、世界平和への大きな貢献になると信じております……」
都庁で立候補ファイルの発表会見に臨んだ石原知事は、報道陣のカメラのフラッシュに目をしばたたかせながら「平和」を強調した。ファイルに掲載した国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長への書簡でも「私の祖国日本は、第二次大戦の後、自ら招いた戦争への反省のもと、戦争放棄をうたった憲法を採択し、世界の中で唯一、今日までいかなる大きな惨禍にまきこまれることなく過ごしてきました」と記した。
石原知事はかねて憲法改正に意欲的な発言を重ね、靖国神社に00年から昨年まで9年連続で8月15日に参拝している。
ファイル発表後の会見では「日本の平和をもっと確かなものにするために、今の憲法を変えた方がいいと思っている。ただ、その憲法の効果もあって平和でこれたのは歴史の事実として大したもの」と言及。「平和」については「新鮮でもない、さんざん言い尽くされた言葉」としたうえで「世界で眺めれば、あんまり実現されていない。だからこそ改めて使った」と強調した。
ただ、これまで都などが展開してきた招致活動で「平和」が強調されたことはほとんど無かった。ファイルでも広島・長崎で行うユースキャンプで平和教育をすると明記された程度で、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会の河野一郎事務総長も「特に平和のための特別なイベントは今のところ予定していない」と述べた。
毎日新聞 2009年2月14日 東京朝刊