東京五輪:唐突な「平和」強調

2009年2月13日 21時32分 更新:2月13日 22時00分

オリンピック・パラリンピックへの立候補ファイルを提出し、会見する招致委員会の石原会長=東京都庁で2009年2月13日午後1時41分、平田明浩撮影
オリンピック・パラリンピックへの立候補ファイルを提出し、会見する招致委員会の石原会長=東京都庁で2009年2月13日午後1時41分、平田明浩撮影

 <平和に貢献する 世界を結ぶオリンピック・パラリンピック>。16年夏季五輪の招致を目指す東京都が「大会理念」に掲げたのは「平和」だった。理念を盛り込んだ立候補ファイルが発表された13日、改憲派の論客として知られる石原慎太郎知事も、現憲法に一定の評価をする姿勢を見せた。いささか唐突な印象はぬぐえず、今後の活動の位置づけも、まだ見えてこない。【木村健二、江畑佳明】

 「日本でオリンピックを開催することは、世界平和への大きな貢献になると信じております……」

 都庁で立候補ファイルの発表会見に臨んだ石原知事は、報道陣のカメラのフラッシュに目をしばたたかせながら「平和」を強調。ファイルに掲載した国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長への知事の書簡でも「私の祖国日本は、第二次大戦の後、自ら招いた戦争への反省のもと、戦争放棄をうたった憲法を採択し、世界の中で唯一、今日までいかなる惨禍にまきこまれることなく過ごしてきました」と記した。

 石原知事はかねて憲法改正に意欲的な発言を重ね、靖国神社に00年から昨年まで9年連続で8月15日に参拝している。会見では「日本の平和をもっと確かなものにするために、今の憲法を変えた方がいいと思っている。ただ、その憲法の効果もあって平和でこれたのは歴史の事実として大したもの」と言及。「平和」という言葉については「新鮮でもない、さんざん言い尽くされた言葉」としたうえで「世界で眺めれば、あんまり実現されていない。だからこそ改めて使った」と強調した。

 ただ、これまで都などが展開してきた招致活動で「平和」を前面に出したことはほとんど無かった。今後も、世界平和の実現を呼びかけるようなイベントは予定していないという。

 ◇財政保証の文書、副知事明言せず

 立候補ファイルに添付された政府の財政保証を示す文書について、この日の会見で具体的な文言を問われた東京都の谷川健次副知事は「新聞に載っていますよね。記者の方々が集めた情報が正しいのかな」などと明言を避け、記者から「無責任な言い方では」と指摘される一幕があった。

 13日に公表されたファイルには、資金不足に陥った場合の補てんについて「日本国政府及び東京都知事が、別添の通り、保証している」と記載されている。しかし別添文書は、公金に関する内容にもかかわらず公表されなかった。質問に答えた東京オリンピック・パラリンピック招致委員会の河野一郎事務総長は「添付書類については、当事者間の合意がない限り公表できないと聞いている」と説明した。

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