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【社会】

【関連】子の権利 入管規制より上 両親の在留認めず 不法滞在に厳しい目

2009年2月13日 夕刊

 一家全員で日本に住み続ける願いは、大きく遠のいた。森英介法相は十三日、日本生まれのフィリピン人で中学一年のカルデロン・のり子さん(13)と父母の家族三人について、「一家全員での在留特別許可はしないことを決定した」と述べた。一家は厳しい運命を背負うことになる。 (さいたま支局・望月衣塑子)

 カルデロンさん一家を支援する渡辺彰悟弁護士によると、不法滞在の両親が日本で子どもを産み育てている家族は、全国に五百組ほどと推計されている。こうした家族に特別在留許可を与えるかどうかは法相の裁量に任されているが、両親が不法滞在者の場合は生まれた子の日本での成育期間が重視される。のり子さんの場合は微妙なケースだった。

 入管白書によると二〇〇七年度の特別在留許可人数は約七千四百人で、うち約五千六百人が不法滞在者。日本人と結婚したり、日本人との間に子がいたりする場合に認められるケースが多い。

 移民の歴史が長いフランスや米国では一九八〇年代から、一定の条件を満たした不法滞在者に特別在留許可を与える「アムネスティ」という恩赦的制度がある。条件は時々で変わるが(1)滞在十年以上(2)重罪を犯していない−などだという。

 この制度に詳しい田中宏龍谷大教授は「不法滞在者が長期間、身分を偽るなどして生活することは、病気や事故の時などに深刻な事態を引きおこす原因となる」と指摘。その上で「日本の労働現場で懸命に働く外国人は多い。問題を起こさず社会に定着している人に安定した生活を保障することは、日本の社会にとっても利益となる」と強調する。

 一方で、「特別在留許可は不法滞在の追認にあたる」などとする批判も根強い。米国では二〇〇六年にアムネスティ制度に反対して一千万人規模のデモが起きた。国内でも不法滞在者への許可に反対する市民団体が存在している。難民の人権保護活動などに取り組む土井香苗弁護士は「出入国管理は大事だが、子どもの権利は入管の規制のさらに上にあるもの。何が子どもにとって最善なのかを重視して考えてほしい」と話している。

 

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