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記者の視点
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DPC新機能評価係数の議論に地方中小病院が注目
「地域医療への貢献の評価」に期待
2009.2.9
DPCの調整係数廃止後の新たな機能評価係数に関して、具体的な議論が始まった。先月開かれた中医協の診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会では、新機能評価係数を検討していく上での基本的考え方の1つに「地域医療への貢献の評価」を取り上げ、評価指標などが整理・提示された。
松田晋哉委員(産業医科大教授)は、「松田研究班」の取り組みの中間報告として、地域医療への貢献度に関する評価のあり方を紹介した。それによると、地域医療計画の4疾病5事業について、患者数、スタッフ体制、患者重症度の評価のほか、疾病ごとに設定した臨床指標を評価する考え方が出ているという。
この議論の行方を、固唾(かたず)を飲んで見守っている地方の中小民間病院も少なくない。実際、昨年末に鹿児島市で催された集会で、新機能評価係数に寄せる期待の大きさを感じる機会があった。
●過疎化の進行が病床稼働率に影響
鹿児島県枕崎市に位置する、あるケアミックス型の中小病院(131床)は、2006年からDPCによる包括支払い請求を開始した。DPC導入に伴いクリティカルパスの作成に力を入れたところ、08年のパス数は60となり2年前の3倍になった。
スタッフの確保にも取り組み、現在は9人の診療情報管理士を抱えている。病棟回診には診療情報管理士が医師に同行し、DPC病名を検討。再入院となるケースでは、医師や看護師が診療情報管理士から入院病棟のアドバイスを受けられるように体制を整えている。このような取り組みの結果、再入院率はDPC導入前の10.35%から6.10%にまで低下した。平均在院日数も10日前後で推移している。
●「地域の実情にあった係数を」
その一方で、病床稼働率は82.6%から75.4%にまで下がった。病院長によると、平均在院日数と再入院率に「意識を集中しすぎた」ことが、その原因だという。
DPCのメリットを生かすためにクリティカルパスの整備を進めれば、平均在院日数は減少するかもしれない。だが過疎化の進む地域で新規患者の大幅な獲得は望めず、病床稼働率は上向かない可能性もある。
病院長は「パスの有効性を落とさずに稼働率を維持できる」手法を思案中との考えを示すが、地方でより深刻さを増す課題を突きつけられた格好だ。
地方のDPC病院では、地域住民の高齢化も大きな障壁だが、この病院も例外ではない。全国の高齢化率が約22%なのに対し枕崎市は31.0%。同市を含む南薩地域振興局の管内でみると、33.1%になる。高齢化が進むにつれ、主傷病以外の合併疾患の多さ、術後の回復の遅さといった高齢患者の特徴が、病院の運営に重くのしかかってくる。
交通網の悪さも影響を及ぼす。病院には南薩地区全域から受診者が訪れるが、高齢者は自家用車でのアクセスが容易でないため、外来での術前検査や術後化学療法を行うのは難しい状況だ。また、軽症であっても入院に至ることも少なくない。
さらに地域中核病院を目指しているこの病院では、救急搬送患者、病院・診療所からの紹介、遠方からの外来受診者がそのまま入院になるケースが多いという。病院数が少なく病病連携の困難な過疎地では、入院が長期間に及ぶケースもあるため、DPC病院の運営・経営という点でマイナス面があることは否めない。
それでも病院長は、「標準化・透明化を意識した医療を行わなければ生き残っていけない」とし、DPCにこだわる。安心、安全でなおかつ安く済む医療を地域で提供してほしいと望む患者に応えるには、DPC以外の方策はないとも言い切る。
ただし地方の中小民間病院にとって、DPCによる運営は不利益が多い。だからこそ「地域医療への貢献の評価」が検討される新機能評価係数に、「地域の実情に合った係数をぜひ作ってほしい」と期待を寄せる。
09年度にはDPC対象病院が約1400施設にまで拡大する見込みだが、同じような立場に置かれている施設は少なくないのではないだろうか。病院の存続を左右しかねない新機能評価係数の議論に、多くの熱い視線が注がれている。(久谷 靖哉)
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