3月から、さいたま市内で軽症の初期小児救急患者を深夜・早朝に受け入れる医療機関がなくなる可能性がある。唯一の受け入れ機関である大宮医師会市民病院(北区)が、さいたま市民医療センター(西区)の開設(3月)に伴って今月末で閉院するためだ。市や市内4医師会は、社会保険大宮総合病院(北区)で代替する方向で調整中だが、医師や看護師らの確保が間に合わないという。【弘田恭子】
大宮医師会市民病院では、初期小児救急患者を午後7時から翌午前9時に、年間約1万3000人受け入れてきた。しかし、同病院の小児科医は、2次小児救急を担うさいたま市民医療センター小児科に移籍することになっている。
このため、大宮医師会は、社会保険大宮総合病院に小児科医を派遣して初期小児救急患者を受け入れることにしているが、従来の「午後10時~翌午前9時」を維持するには約50人の医師の協力が必要。しかし、県小児科医会長の羽鳥雅之・大宮医師会長は、「これまで小児救急を大宮医師会に任せきりにされ、『もう疲労困憊(こんぱい)』との声も多い。大宮だけでは体制を維持できず、受け付け時間を大幅に短縮せざるを得ない」と話す。さらに羽鳥会長は「市の事業なので、市に積極的に取り組んでもらわないと困る」と苦言も呈する。
こうした声に、市健康増進課は昨年秋、浦和、与野、岩槻、大宮の市内4医師会長らが参加する「医療体制検討会」(会長・高梨邦彦浦和医師会長)を設置。大宮以外の3医師会にも小児科医の派遣を要請しているが、そもそもどの病院で代替すべきかや、運営体制の在り方などを巡り、関係者の意思統一すらできていない状況だ。
同課は「医師会に医師を集めてもらうしかなく、どこの自治体でも苦労している」と話すが、市が1月、政令市と宇都宮市を対象に実施した調査では、回答のあった15市中12市で深夜・早朝も初期小児救急を受け入れていた。残る3市も午前0時前後まで実施していることが分かっている。同課は、深夜・早朝に勤務する医師や看護師の手当の増額も検討している。
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■ことば
救急医療体制は、発熱など軽症患者を診る初期救急▽手術や入院が必要な患者対象の2次救急▽命にかかわるけがや病気を扱う3次救急--に分かれて整備されている。小児救急を巡っては、医師不足に加え、緊急性がないのに休日や夜間に救急を利用する「コンビニ受診」の増加も問題になっている。
毎日新聞 2009年2月12日 地方版