裏金の地下水脈はどこまで流れていたのか‐。キヤノンの工場建設などに絡む脱税事件で10日、事件の核心を握るとされる大分市のコンサルタント会社「大光」社長大賀規久容疑者(65)ら7人が新たに逮捕された。7人には大賀容疑者のほか、かつて大分県議会議長を務めた長田助勝容疑者(80)など計3人の同県在住者の名も。連日の強制捜査で、逮捕されたのは計12人に。大分を主たる舞台に特捜検察が解明を始めた事件の闇は、どこまで広がっているのか。
キヤノン関連施設工事をめぐる法人税法違反の疑いで逮捕された元大分県議長の長田容疑者。県議を7期務めたかつての「県議会の重鎮」は逮捕直前、周辺には事件への関与を否定していた。しかし、自身が大賀容疑者のグループ会社「ライトブラック」の監査役を務めていたほか、同容疑でともに逮捕された長女の長田美穂容疑者(47)が大光グループで働くなど、深いかかわりがあった。
「監査したこともなければ、報酬をもらったこともない」。関係者によると、長田容疑者は東京地検の事情聴取に応じるため10日、自宅を出る前にそう語ったという。
長田容疑者と大賀容疑者、キヤノンの御手洗冨士夫会長(73)の3者を結ぶ線は太い。3人とも大分県佐伯市出身で、親密な仲だったという。関係者によると、長田容疑者と大賀容疑者のつきあいは父親の代から。長田容疑者と大賀容疑者の兄が地元の旧制中学の同級生でもあり、関係を深めたとみられる。長田容疑者はライトブラック以外にも大光など関係2社の監査役を務めていた。
御手洗会長とは親せきで、長田容疑者はお盆や正月の休みに御手洗家と行き来し、子どものころは一緒に遊んでいたという。
長田容疑者は1952年に大分県庁入り。59年に退職し家業の漁業を継いだ。79年に県議に初当選し、95年から2年間、議長を務めた。ベテラン県議は「引退しているとはいえ、大分県議会の議員として恥ずかしいこと」と吐き捨てるように言った。
=2009/02/11付 西日本新聞朝刊=