「敵と戦うには複数の武器があるほうがいい」。インフルエンザ対策に取り組む専門家はこう語ることが多い。薬剤では「タミフル」と「リレンザ」が武器に当たる。
政府は新型インフルエンザに国民の25%が感染すると想定し、このうち8割が医療機関を受診すると予想。それに対応するため、2800万人分のタミフルと135万人分のリレンザを備蓄した。
リレンザは英製薬企業グラクソ・スミスクラインが開発した。タミフルと同様、ウイルスの表面に分布するたんぱく質「ノイラミニダーゼ」の働きを阻害し、増殖を抑える。
今冬、ほぼすべてのAソ連型ウイルスでタミフルが効かない耐性化が確認され、リレンザへの注目が高まった。リレンザへの耐性ウイルスは確認されていない。消費量はタミフルの約1割で、同社日本本社(東京都)は厚生労働省の要請で、今冬準備した300万人分から追加輸入を検討している。
リレンザの特徴は即効性だ。水に溶けやすい親水性で腸から吸収されない。そこで、吸入式で薬剤を気道や肺の患部にとどまらせてウイルスを一気に攻撃する手法にした。タミフルは腸から吸収後に血液で運ばれて効果を発揮するため、時間がかかり耐性ウイルスが出現しやすいと考えられている。ただ、経口薬のタミフルに比べ、吸入式のリレンザを子どもに服用させるのが難しい。斎藤玲子・新潟大講師(公衆衛生学)は「リレンザは臨床試験で安全性を確認した5歳以上で使用できる。新型インフルエンザがタミフル耐性能力を備える恐れもある。政府はリスク分散の立場で備蓄対策を考えるべきだ」と話している。【関東晋慈】
毎日新聞 2009年2月10日 東京朝刊
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