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【社会】

大好きな日本で両親と生活を 13日に仮放免期限 蕨の比人中学生

2009年2月9日 13時59分

 最高裁で国外退去処分が確定し、在留特別許可を求めている埼玉県蕨市、フィリピン人のカルデロン・アランさん(36)と妻サラさん(38)、中学一年の長女のり子さん(13)の身柄収容を一時的に停止する仮放免が十三日、期限を迎える。日本で生まれ育ったのり子さんは「大好きな友達や先生のいる日本で、両親と一緒に生活させてほしい」と訴えている。 (さいたま支局・望月衣塑子)

 のり子さんの生活が一変したのは二〇〇六年七月。偽造旅券で一九九二年に入国したサラさんの不法滞在が発覚し、逮捕された。九三年に来日し、東京都足立区の建設会社で働いていたアランさんも不法滞在だった。

 のり子さんは、中学校で合唱部に所属。昨年八月にはNHK全国学校音楽コンクールの舞台に立った。「学校で学ぶ全科目が面白い」と話すのり子さんの夢は、日本人の友達と一緒にダンススクールを開くことだ。

 サラさんが逮捕された後、一家は日本語しか話せないのり子さんの将来を考え、入国管理局に仮放免を申請。一方で、退去取り消し処分を求める訴訟を起こしたが、昨年九月に最高裁で退去処分が確定した。その後、仮放免は三度延長されている。

 この間、アランさんの勤務先の社長が、サラさんの保釈金を立て替えてくれた。昨年十月には、のり子さんの友人や近所の人らが在留許可を求める署名運動を開始。集まった一万七千人分を超える署名は、森英介法相に提出された。

 のり子さんは「自分たちを支えてくれる人たちがこんなにいるなんて思わなかった。一時期は落ち込んでばかりだったが、今はいろんな人に支えられ感謝している」と話す。

 国内の不法滞在者は約十四万九千人と推定されているが、特別在留許可を与える基準は明確ではない。同じように、不法滞在の両親と日本で生まれ育った中学生のフィリピン人一家が、国外退去処分の取り消しを求めた訴訟で、訴えは退けられたものの、判決に「日本で教育を受ける機会を失わせ、将来の夢を断念させるのは見るに忍びない」と付言があり、在留が認められたケースもある。

 今回の問題が報道されるようになった後、のり子さんが通う中学校には「どうして不法滞在者の子どもを受け入れるんだ」という批判の電話が相次いだ。このため、当初支援していた学校側は「今は事態の推移を見守るしかない」とする。

 アランさんは「私たち夫婦は不法入国しました。でも娘にはなんの罪もない」と話している。一家を支援する渡辺彰悟弁護士は「子どもには等しく教育を受ける権利がある。入管は、日本で夢を実現したいというのり子さんの思いをよく聞いた上で判断してほしい」と訴えている。

(東京新聞)

 

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