2006年03月12日

待遇改善と差別待遇撤廃の問題

朝鮮総督府 元財務局長  水田直昌
友邦シリーズ第23号「朝鮮財政余話」財団法人友邦協会
p99〜103
 

先述の義務教育、これは直ちに実行することはできない。毎年教室を作るだけでも大変である。そこで昭和21年を期して義務教育を実施するということを17年に決定しました。これで朝鮮人は一応納得しました。

それから役人の待遇改善についてでありますが、加棒は朝鮮人に対してはもともと無理な話であります。内地人は朝鮮に参りますと、植民地加棒として高等官は4割、判任官は6割ついている。朝鮮人にも大学出、専門学校出が追々多くなってきて、内地人と机を並べていると、本棒は同じ百円でも内地人は百六十円貰えるから、明らかに差別待遇であるという。しかし内地を出て朝鮮まで来ていると、伝染病の脅威とか病気の点とか子供の教育とかに特別に金が掛かるので、そのために加棒を支給するのは当然と思われるが、現実には同じ場所で同じに働いていて、それだけの差があるのは感情上納得できないとして問題になる。小磯総督は内地人の加棒をなくするか、朝鮮人にも内地人同様の待遇をするか、二者択一の立場に立たされたわけです。昭和19年は物価騰貴になった年でありますので、到底内地人の加棒を削ることは思いもよらぬことで、そうなれば朝鮮人に増してやるほかはない。これは理論的には無理なことですが、政治問題として放ってはおけぬということでしょう。しかし大蔵省の主計局に話して見ますと、「もってのほかであり、論外のことである。」と大反対です。しかし何とか彼とか理屈をつけて大蔵省に説明する、また台湾にも同調して貰うようわたりをつける、それが我々の役目でありました。

(中略)

結局朝鮮人に加棒を出す理由の可否について、一般のものは何がなんだかわからないと言う有様でありました。要するに全部に加棒をやれば非常に金がかかる上に却って悪平等にもなるので、一応内地人に対しては在来の加棒支給の理屈のとおりにして、異民族統治に当たるものは非常に苦労が多いからそれによって加棒をやる。朝鮮人に対しては朝鮮財政に余力があり、本当に日本人になったならば対等にしてやることにしたらどうかという事に落ち着き、朝鮮の人もマアマアとうなずくことになりました。

これは昭和19年のことで小磯総督がとられた政治的政策の一つでありました。朝鮮人加棒問題が片付いたその年の七月に、東条内閣が瓦解しまして、小磯総督が組閣の大命を拝されて、日本へ帰られたのであります。

(中略)

次いで、昭和19年七月から20年8月までの安部総督の一年間は、参政権を朝鮮人に与えよという問題で終始したともいえます。

参政権の内鮮人間の差別を撤廃するということについて、昭和十九年の九月の臨時議会において、小磯内閣総理大臣の施政方針演説の中で、朝鮮及び台湾の人に何等かの形において参政権を与えるということが発表されました。

そこで貴族院のほうへは朝鮮から七人、衆議院の方へは制限選挙として、直接国税十五円以上を納めた者が凡そ百万人位いるから、朝鮮から二十六人の議員を送るという法律が通ったのです。

なお役人の待遇改善については、先述のように昭和十九年に一部の朝鮮人だけについて待遇改善を致しましたが、二十年になりますと、反内地の気分を緩和する一つの手段として、朝鮮人の官公吏全部に内地人同様に加棒をやってしまうことになりました。理屈にはならないがやってしまうということで行われました。

また先に定められた教育制度の改革も二十年に繰り上げてやろうということになりました。

 

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