【ローマ=南島信也】イタリアで17年前の交通事故で植物状態になった女性、エルアナ・エングラロさん(38)の延命措置停止をめぐる問題で、同国政府は6日、延命措置停止を止める緊急政令を決めた。ただナポリターノ大統領が署名を拒否したため政令は発効せず、与党側は同じ内容の緊急法案を数日中に可決させる方針だ。
ANSA通信などによると、エングラロさんが入院している同国北東部ウディネの病院は同日、栄養補給チューブから送られる栄養と水分を減らし始めた。チューブを外すと約2週間で死に至る。
これに対し政府は、医療従事者が栄養補給チューブを外す行為を禁じる緊急政令を閣議決定した。
エングラロさんの父親は、彼女の生前の意思を根拠に治療の打ち切りを求め提訴。昨年11月に最高裁が延命措置停止を認める判決を下していた。緊急政令は最高裁判決に反するが、憲法で緊急事態に対処するものは認められる。しかしナポリターノ大統領は「緊急事態の条件を満たしていない」と署名を拒否した。
世論調査では58%が延命措置停止を容認しているが、政府は延命停止に反発するローマ法王庁や一部カトリック団体に配慮したとみられる。