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【社会】

南京交流市民イベント 名古屋市が後援取り消し

2009年2月8日 朝刊

 名古屋市と中国南京市との友好都市提携30周年(昨年12月)を記念し、市民らが3月に計画する交流イベントについて、名古屋市がいったん「後援」すると決めながら、会場で南京大虐殺記念館所蔵の写真を展示することを理由に、許可を取り消していたことが分かった。

 記念館の写真の一部については、政府が「事実関係に強い疑義が提起されているものが含まれている」との見解を示している。主催者側が提出した事業計画書には記念館の資料を展示する旨を明記していたが、市は「写真が含まれていると思わなかった。審査が不十分だった」と釈明している。

 イベントはアジア・ボランティア・ネットワーク東海や日中友好協会愛知県連合会など日中の交流事業に取り組んできた団体や市民らが準備会をつくって企画。3月24−29日に名古屋市の名古屋国際センターで両市民の討論会や音楽会を開くほか、南京大虐殺記念館から写真などを借りて展示する。

 市の“お墨付き”である後援を得ても、費用補助など具体的な支援はないが、主催者側は、イベントの信頼度や市民へのPR効果が高まると期待する。

 同市国際交流課によると、準備会は昨年11月、名古屋市に後援申請し、3週間後に許可を受けた。市はその後、イベント予告の新聞記事などで写真展示があることに気付き、記念館についての政府見解を衆院のホームページで確認。外務省などに問い合わせしないまま、「市が後援することで、事実関係に疑義がある写真について、真実であると政府見解と異なる誤解を市民に与える恐れがある」として、12月中旬に取り消した。

 準備会事務局の森賢一さんは「展示内容は市と協議して決めると伝えてある。後援の取り消しは一方的すぎる」と撤回を求めている。

 ◆極めて軽率な対応

 【樋泉克夫・愛知県立大教授(中国文化)の話】 政府がどの展示に疑義があるのか明らかにしていない以上、名古屋市が独自に判断することは困難で、最終的に後援を取り消したのはやむを得ない。しかし、南京市と友好提携を結んでおきながら、記念館についての十分な認識もなく、慎重に扱うべき問題の審査を簡単に通したり取り消したりするなど、極めて軽率と言わざるを得ない。

 【南京大虐殺記念館】 1985年に開館。旧日本軍による市民の殺害などがあった37年の南京大虐殺に関する写真約3500枚のほか、被害者や日本軍の遺品など約3000点を展示。敷地内の壁には中国側が主張する犠牲者数「30万人」が刻印されているが日中間では犠牲者数をめぐっても争いがある。日本の上海総領事は昨年1月「事実関係に疑義のある展示がある」として南京市政府に展示内容の見直しを求めた。だが、どの展示に、どのような疑義があるか日本政府は具体的に明らかにしていない。

 

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