広島大本部キャンパス跡地(中区)の再開発を巡り、「原爆遺跡保存運動懇談会」など5団体は2日、被爆建物の旧理学部1号館への自然史博物館設置と、老朽化が進む建物の応急補修を求める要望書を広島市に提出した。再開発の予定業者が相次いで経営破綻(たん)し、計画が白紙に戻ったため、「平和都市にふさわしい保存を改めて考えてほしい」と要望した。
他の4団体は「自然の博物館をつくる会」▽広島県に自然史博物館をつくる連絡協議会▽元広島文理科大学(旧広大理学部一号館)の保存を考える会▽芸備地方史研究会。博物館建設の要望は、05、06年に次ぎ3回目。
この日は、同懇談会座長の頼祺一・広島大名誉教授らが市役所を訪れ、「原爆の悲劇と復興の緑を連続させ、生命の重要性を世界に発信する自然史博物館としての活用を」などとする要望書を手渡した。市側は、建物の耐震性不足とコンクリート壁の著しい劣化で、活用が難しいと説明。「保存方法を少し時間をかけて考えたい」と答えた。また、窓ガラスの破損が目立つため、所有者の国立大学財務・経営センターに伝えて補修を検討する考えを示した。
旧1号館は31年、広島文理科大本館として完成。再開発事業「知の拠点」構想の中核だが、事業予定者だったアーバンコーポレイションの経営破綻などで保存計画は白紙に戻った。【宇城昇】
毎日新聞 2009年2月3日 地方版