桜井淳所長の最近の講演内容-日本の原子力開発の中枢機関はどこか 4-
テーマ:ブログ【講演要旨】創設期に動燃が採用した"業務委託"を重視する"参謀本部"方式(原産会議『原子力は、いま(上)』(原産会議、1986)のp.191)とは、どのような制度かと言えば、建前としては、「新事業団の役割・性格についてもさまざまな角度から、時には非公開の席を設けて、各所で真剣に討議された。アンチテーゼとして原研は存在していても、国の総力をあげて推進するこの動力炉開発の中核である新法人は、開発の"参謀本部"といった性格のものにすべきか、開発公社のようなものにして施設・人員をすべてその中に取り込むようなものとすべきかが大きな岐れ道であった。日本的な風土の中では一つの新組織が効率ある有機体として活動できるには数年は必要とされるだけに、先進国へのキャッチ・アップを急ぐ本計画の場合、"開発公社"案は間尺に合わないものとして排除され、人間を事業団に引抜くよりも組織ぐるみ各機関の力を活用する"業務委託"を重視する"参謀本部"方式に決まった。そして、業務遂行を計画的に進めるため、動燃はOR手法、RERTなどの科学的管理法を駆使してプロジェクトを機動的に運営することになって、"計画管理部"という組織も設けられた」(同、pp.190-191)と、歯の浮くような高い理念が掲げられていますが、実際の業務内容と手順は、原子炉メーカーを初めとする原子力産業界から、一社当たり数名のエンジニアを出向させ、そのひとたちを動燃職員として採用し、彼等は、技術仕様書を書き、法外な開発費込みの技術開発・製品製造を出向元に発注し、各社からの出向者がみなそうようなことをして、莫大な開発予算を濡れ手に粟方式に、自由自に出向元に便宜を払うようにしており、発注先は、メーカーのみならず、大学や原研にも及び、各社・原研・大学とも、少ない場合でも、普通の2、3倍、多い場合には、十数倍もの開発費をばら撒いており、原研や大学の研究者は、そのような方式で入手した開発費をうまく利用して、実際の業務は、その数分のの予算でシンクタンクやソフト会社、下請け等に発注し、浮いたカネを活用し、自由な研究や本来組織の予算でやらなければならないような研究まで、そのような資金を流用しており、そのように方式は、何も動燃を中心とした濡れ手に粟方式ではなく、大学の研究者が依存している科研費にもそのような流用が日常的になされており、私は、若い頃、原研の研究室で、そのようなカラクリの一部始終を知り得ることができましたが、動燃は、そのような方式で得た成果を報告書として納品させ、表紙だけ差し替えて動燃報告書にしたり、白々しくも、学会口頭発表や国際会議発表等までしており、そのような仕事の仕方は、経済産業省管轄の原子力部門組織でも実施されており、内実に詳しい者からすれば、この世の中は、まさに、狐と狸の化かし合いということになるのでしょうが、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」も動燃と原子炉メーカーの間の化かし合いの結果建設されたものであり、まともに動かないだけでなく、建設費が20年前の価格で7000億円にも達し(いまの貨幣価値に換算したら1兆円にも達しますから驚きです)、当時、110万kW級軽水炉の建設費が3500億円の時代でしたから、単純に比較して、「もんじゅ」の建設費は、2倍となり、単位電気出力あたりに換算すれば、8倍にも達し、信じがたい数字となり、「もんじゅ」施設の内部を詳細に見学してみれば、それほどの価値が認められず、やはり、動燃は、原子炉メーカーに普通の数倍のカネを騙し取られていた事が証拠として残っているように受け止められ、タービン室の広いフロアに、小さなタービン・発電機がひっそり、貧弱に設置されている光景を見ると(桜井淳『原発システム安全論』、日刊工業新聞社、1994)、本当に粗末な施設という印象を受け、"業務委託"を重視する"参謀本部"方式とは、まさに、以上のごとく、ナショナル・プロジェクトなる美名の下に、原子力産業界が莫大な原子力予算を濡れ手に粟方式で自由自在に騙し取るための制度たったと言えます。