【イスラマバード=関本誠】アフガニスタンとの国境に近いパキスタン北西辺境州のスワート地区で、同地区を実効支配するイスラム原理主義勢力タリバーンと政府軍との戦闘が激化している。先週末の交戦で多数の住民が犠牲になり、戦闘の巻き添えとタリバーン支配を恐れる住民らが続々と避難している。
同地区ではタリバーン系組織がほぼ連日、「反イスラム的だ」として女子校に放火したり、爆破したりしている。先月下旬には、地元の政治家ら40人以上の処罰対象者リストを公表し、「敵対的」な市民らへの攻撃を強めた。
これに対し、政府軍が掃討作戦を強化。外出禁止令を出して、タリバーン系組織のメンバーらの即時射殺などを指示した。ギラニ首相は2日、「出口は見えつつある。すぐに平和が訪れるだろう」と力説した。
政府軍は3日、少なくとも武装勢力35人を殺害したと発表。先週末の交戦でも16人を殺害したとしているが、地元紙などによると、この戦闘で住民ら43人が軍の砲撃の巻き添えで犠牲になった。
住民らはもともと、タリバーンの支配にもおびえる日々を過ごしていた。現地からの報道によると、毎日夜にタリバーン系のFMラジオ放送を聴くことを義務とされ、指示に背くと処罰を受け、最悪の場合には殺されることもあるという。
警察官も頻繁に襲われ、遺体で見つかることも多い。このため警察官の大部分は職場を放棄し、任務を続ける警察官も軍の警護がないと安全が確保できない状況という。
07年以来、同地区での市民の犠牲は約1200人にのぼり、今回の戦闘激化で住民らは戦々恐々としている。外出禁止令で食料もなかなか確保できず、家を離れる住民が急増。政府が設置した避難所などに数千人が集まっているほか、親類を頼って同地区から脱出する住民も多い。