【ニューデリー栗田慎一】パキスタン部族支配地域カイバル管区で3日、カイバル峠を経てアフガニスタンへ向かう道に架かる橋が爆破された。道路はアフガン駐留米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍の物資輸送路で、米軍の越境ミサイル攻撃に反発する武装勢力の犯行とみられる。
地元当局によると、爆破された橋の橋脚は低く、川にも水流がほとんどないため、車両は川底を経由して走行できるという。しかし現場周辺には爆破されれば輸送路が途絶する大きな橋もあり、今回の爆破は、橋の爆破を開始しアフガンへの物資輸送を途絶させるとの、武装勢力の警告と受け止められている。
武装勢力による輸送路攻撃は昨年夏以降、米軍のアフガン側から部族支配地域への越境ミサイル攻撃に比例して増加。昨年12月にはNATO向け輸送を行う業者団体が業務を中断した。パキスタン軍が1月上旬に掃討作戦を始めて輸送は一部再開したが、オバマ米新政権発足後も越境攻撃が続いていることから、武装勢力は「報復攻撃の強化」を宣言した。
パキスタン側の情勢悪化で、NATOなどは昨年12月、アフガンの北側に当たるロシアや中央アジア諸国と代替の輸送路交渉を開始し、大筋合意を取り付けた。
だがパキスタン政府幹部によると、アフガン周辺各国は武装勢力が自国への越境攻撃に乗り出すとの懸念を抱いているといい、代替輸送の開始時期などのメドは立っていない。
NATOはアフガンで必要な物資の7割をパキスタン経由で得ているとされる。だがパキスタン経由のNATO物資は半数程度に落ち込んでいるとみられ、雪解けによる3月の戦闘本格化を前に、いら立ちが深まっている。
毎日新聞 2009年2月3日 21時59分(最終更新 2月3日 23時56分)