ヒトiPS細胞:マウス治療に成功…慶応大チーム、世界初

2009年2月4日 13時09分

 さまざまな細胞や組織に分化する能力を持つヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使い、脊髄(せきずい)損傷のマウスを治し、運動機能を回復させることに、慶応大の岡野栄之教授(再生医学)らが成功した。ヒトiPS細胞で実際に、病気のモデル動物の治療に成功したのは世界初といい、人間の再生医療の実現にさらに一歩近づいた。

 岡野教授らは、ヒトのiPS細胞を、ニューロン(神経細胞)とニューロンを補佐する役割を持つグリア細胞に分化させた。この細胞に未分化のiPS細胞が残っていないことを確認し、免疫機能を働かなくしたマウスに脊髄損傷を起こして、その9日目に移植した。その結果、十分に動けなかったマウスが、正常に歩けるようになったという。

 岡野教授は「まだ約2カ月の経過だが、正常な機能の回復が確認できた。ヒトiPS細胞では初めての治療例の報告だろう。より長期の安全性を確認し、臨床応用に向けて研究を進めたい」と話している。【奥野敦史】

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