年中無休で、24時間の外来診療を続けている枚方市民病院(同市禁野本町2)の小児科が、態勢の維持に危機感を募らせている。当直を担う大学病院からの派遣医が過酷な勤務で疲弊しているうえ、4月から大幅に減る見込みとなったためだ。同病院は地元医師会を通じて開業医らへの協力を求めるなどしているが、光明は見えていない。【宮地佳那子】
同病院は、全国で小児科が減少傾向にある中、市民病院の役割として00年4月から北河内地区で唯一、「無休」の小児科診療を実施してきた。これを維持するため、当直時間帯(原則午後5時~翌午前9時)は、大阪医科大(高槻市)のほか、関西医科大(枚方市)や地元医師会から毎月計約30人の医師の派遣を受けている。
しかし、ほとんどの派遣医は、所属する大学病院で通常勤務があるため、当直開始時刻に間に合わなかったり、翌朝まで診療できなかったりすることが常態化。その場合、常勤医(計8人)が穴を埋めるなど、元々医師が足りないのが現状だ。
また、派遣医は複数の病院で当直勤務をこなすため、当直が月計8日にのぼる人も。特に患者が多い日曜は、ほぼ一睡もできないまま月曜の通常勤務に向かうなど、「命を削って勤務している状態」(同病院幹部)という。
これに加え、04年度から始まった臨床研修医制度が人手不足に拍車をかける。医大卒業生が研修先の病院を自由に選べるようになったため、医局(大学病院)への入局が減り、大学病院から市民病院への派遣医確保が難しくなった。月平均18人と同病院への派遣が最多の大阪医科大は4月から大幅に減る見通しだ。派遣医の中心を担う大学院4年生4人が3月で卒業するが、新制度の影響で2、3年生が現在一人もいないためという。
今の時期はインフルエンザや風邪などが流行し、外来患者が年間で最も多い。昨年12月31日は182人の小児科外来患者に対し、2人の当直医で診療したが、最大約3時間待ちになった。同病院は手術や入院など緊急性を要する2次救急診療が原則だが、実際は発熱やせきなど緊急性がない1次救急患者が多く、重症患者が待たされる懸念もある。
そこで、同病院は地元医師会に土曜・日曜・祝日の1次救急患者の診療を依頼するなど、同病院に集中する患者の振り分けを打診しているが、交渉は難航している。田邉卓也小児科長は「派遣医が減っても、これ以上医師一人一人の負担は増やせない。泉州や豊能地域のように休日の小児1次救急診療のセンターを作るなど、1次救急と2次救急診療を分ける仕組みが必要」と話している。
毎日新聞 2009年2月4日 地方版