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周産期医療:母体救命も重視 妊婦死亡問題受け、施設の基準見直し提言--有識者懇

 東京都内で起きた妊婦死亡問題を受け、厚生労働省の有識者懇談会(座長、岡井崇・昭和大教授)は3日、再発防止に向けた報告書をまとめた。周産期医療が一般救急と別に運用されてきた点に問題があったとして、「周産期母子医療センター」の指定基準を、母体救命の観点も加えて年度内に見直すよう提言。全国の新生児集中治療室(NICU)を最大1・5倍に増やすことや、都道府県が搬送時間のデータを定期的に公開することなどを求めた。

 産科救急の医療機関としては、全国に75の総合周産期センターが指定され、その下に約240の地域周産期センターがある。

 だが、NICU不足で恒常的に急患を受け入れられなかったり、お産以外の妊婦搬送に対応できないセンターも多い。

 報告書は、周産期センターを機能に応じて3~4種類に再分類することを提案。救命救急センターや脳外科の有無などで、「母体」「胎児」「新生児」のどの領域に対応できるか明示し、すべての受け入れが可能な施設も配置するよう求めた。医療計画の基本方針を改め、周産期救急を一般の救急医療対策の中に位置付けることも必要だとした。

 「受け入れ不能」の解消策としては(1)NICUを800床程度増やす(2)病院ごとの受け入れ基準を作成(3)県境を越えた搬送体制の構築--などを挙げた。診療科として「新生児科」を掲げられるようにすることも認めるべきだとした。

 ただし、病院間の連携や搬送体制については「地域ごとの特性がある」として統一したルールを示さず、具体的な対応を各都道府県に委ねた。

 また、これまで各消防本部が把握していただけだった搬送先決定までの時間や照会病院数を、都道府県が定期的に公開・分析し、改善に役立てるよう提案した。【清水健二】

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 ■ことば

 ◇都内の妊婦死亡問題

 08年10月、脳出血を起こした妊婦が総合周産期母子医療センターの都立墨東病院など8病院に受け入れを断られ、出産後に死亡した。その後、9月に同様の症状の妊婦が杏林大病院など6病院で受け入れ不能とされ、意識不明の重体になっていたことも判明。病院側に脳出血の情報が十分に伝わっていなかったことや、NICUや医師の不足が、搬送先が決まらなかった原因とされる。

毎日新聞 2009年2月4日 東京朝刊

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