東京都内で起きた妊婦死亡問題を受け、厚生労働省の有識者懇談会(座長、岡井崇・昭和大教授)は3日、再発防止に向けた報告書をまとめた。周産期医療が一般救急と別に運用されてきた点に問題があったとして、母体救命に対応できるよう「周産期母子医療センター」の指定基準の年度内見直しを提言。全国の新生児集中治療室(NICU)を最大1.5倍に増やすことや、都道府県が搬送時間のデータを定期的に公開して改善を図ることなどを求めた。
国は都道府県に「総合周産期母子医療センター」を1カ所以上設置することを求め、産科救急の最後のとりでと位置づけている。しかし、NICUの不足で恒常的に急患を受け入れられなかったり、お産以外の妊婦の急変に対応できないセンターも多い。
報告書は「受け入れ不能」の解消策として(1)周産期センターを機能に応じて3、4種類に分類し、救命救急や脳外科などの機能も備えた施設も整備(2)NICUを800床程度増やす(3)病院ごとの受け入れ基準策定(4)県境を越えた搬送体制の構築--などを挙げた。厚労省には実現のための人員と財政面の支援を求めた。さらに、周産期救急医療を一般の救急医療対策の中に位置づけるよう、医療計画の基本方針改正を求めた。
ただし、病院間の連携や搬送体制については、「地域ごとの特性がある」として統一ルールを示さず、具体的な対応を各都道府県に委ねた。
また、これまで各消防本部が把握しているだけだった搬送先決定までの時間や照会病院数を、都道府県が公開・分析し、改善に役立てるよう提案した。【清水健二】
◇都内の妊婦死亡問題
08年10月、脳出血を起こした妊婦が総合周産期母子医療センターの都立墨東病院など8病院に受け入れを断られ、出産後に死亡した。その後、9月に同様の症状の妊婦が杏林大病院など8病院で受け入れ不能とされ、意識不明の重体になっていたことも判明。病院側に脳出血の情報が十分に伝わっていなかったことや、NICUや医師の不足が、搬送先が決まらなかった原因とされる。
毎日新聞 2009年2月3日 21時28分