(9)石射史料に虐殺の記述なし


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『神は沈黙せず』批判(まえがき)
(1)南京論争登場
(2)否定論を理解しているか?
(3)本当に処刑されたのか?
(4)捕虜ハセヌ方針(東中野説)
(5)捕虜ハセヌ方針(南京戦史)
(6)トンデモ国際法
(7)便衣兵摘発の状況
(8)形勢不利なのはどっち?
(9)石射史料に虐殺の記述なし
(10)なぜ数が問題になるのか
(11)虚構の上に論を重ねた虐殺説
「あとがき」のようなもの


 『神は沈黙せず』山本弘著 角川書店
 P58−P64(順次抜粋)

 当時、兵士たちのこうした目に余る暴走は、本国にも伝わっていた。外務省東亜局長であった石射猪太郎の一九三八年一月六日の日記にはこうある。
「上海から来信、南京に於ける我軍の暴状を詳報し来る。掠奪、強姦、目もあてられぬ惨状とある。鳴呼これが皇軍か。日本国民民心の頑廃であろう。大きな社会問題だ」
 こうした記録が数多くある以上、「南京大虐殺は東京裁判で初めて出てきた」などという主張が誤りであるのは疑いがない。
  
 議論の勝敗はあきらかだった。真田はろくな歴史知識を持たず、まともな資料を調べてみようという意欲もなく、その論理は穴だらけだった。それに対し、「あくはと」の知識量と資料検索にかける情熱には際限がないように見えた。

 バトルが終わりに近づくと、とうとう真田は最後の悪あがきに走った。「あくはと」を「アカ」と罵り、「東京裁判史観に毒されている」とか「中国から金を貰っている」などと決めつけたのである。「あくはと」というハンドルネームは「赤旗」のもじりに違いないとも主張した(実際はカナアンの神話に出てくる美青年の名前である)。彼の文章はどんどん支離滅裂になり、まさに末期症状と呼ぶにふさわしかった。それに対し、「あくはと」は最後まで冷静だった。


 外務省の石射局長は日本におり、文中で示されたように「上海から」連絡をうけています。ここが重要なのですが、石井局長独自の情報収集ルートがあったわけではなく、外務省からの報告を受けそれを日記に記述したわけです。
 記述内容は掠奪、強姦」で虐殺の文字はありません。


 略奪強姦事件が発生したことは、国際委員会から外務省(福田氏など)に抗議がされています。またこれらの抗議文書は外務省に提出されています。石井局長の手に渡った資料もこれです。いわゆる国際委員会の公文書と呼ばれているもので、日中戦争史資料集・英文関係資料に収録されています。
 一月七日までの事件数は未遂を含む179件で、大半が略奪・強姦・傷害といったものです。三月末までの合計でも殺人事件50件弱、強姦約350件、略奪180件などであり、市民が何十万人も殺害されたという報告はされていません。ですから石井局長の日記に「虐殺」の文字がないのは当たり前のことなのです。
 しかしながら百件以上の犯罪が発生したという報告書があるわけですから、「嗚呼、これが皇軍か」、「目も当てられぬ惨状」と評価するのは率直な感想といえるでしょう。
 (これら報告の信憑性については前ページ国際委員会の犯罪報告を参照)




 虐殺が記されていない史料を引用して、『こうした記録が数多くある以上、「南京大虐殺は東京裁判で初めて出てきた」などという主張が誤りであるのは疑いがない。』というのは論理的にかなり無理があると思われますが、SF作家の山本さんの中では整合性があるのでしょうか。SF作家としてはともかく、と学会会長としてこのように支離滅裂な論理を展開するのはいかがなものかと思いますが。

 





いよいよ自爆する山本さん
 『神は沈黙せず』山本弘著 角川書店
 P58−P64(順次抜粋)
  
 議論の勝敗はあきらかだった。真田はろくな歴史知識を持たず、まともな資料を調べてみようという意欲もなく、その論理は穴だらけだった。それに対し、「あくはと」の知識量と資料検索にかける情熱には際限がないように見えた。



「勝敗はあきらか」か?

(1)否定論・真田は山本さんの作り上げたキャラです。真田をアホに描いてまともな否定論を登場させないのは山本さんのご都合主義にすぎません。

(2)肯定論「あくはと君」がまともに史料を読んでおらずトンデモ理論を展開していることは既に説明した通りです。

 以上から導き出される結論は、肯定論・否定論ともに現実世界の水準に達していないので、「作者である山本さんの敗北」という評価が妥当であると私は思います。


 作品中「あくはと」君は、頭がいい人間として描かれているようですが、殺害されていない捕虜について「揚子江で殺害されただろう」という意味の根拠のない推測をしてみたり、国際法その他でトンデモ理論を披露しているほか、全般的な論理展開が幼稚なのであまり賢そうな人間には見えません。作品の対象年齢が十代のようですから、致命的な瑕疵とはならないのかもしれませんが、大人が読むとなると(経済問題など他の部分でも)ちょっとキツイかなと思います。







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