『南京虐殺の徹底検証』P218−220 東中野修道著 展転社
英国領事の日本軍批判
(略)
これが一月下旬に書かれた報告書であった。もし正規兵処刑が戦時国際法違反であったならば、それが最大の不法行為になった。
ところが、日本軍戦時国際法違反の主要なものは、英国領事の見るところ、日本軍の「掠奪」であった。そして、南京で「残虐行為(アトローシティーズ)」が生じたとのみ、記録されたのである。
この点では、一九三九年(昭和十四年)の『南京救済国際委員会報告書』も同じであった。べイツ教授が委員長として刊行したこの報告書は、十二月中旬の日本軍の掃蕩戦を批判して、「十二月中旬の大殺戮」the general slaughter of mid-December と記録した。つまり、日本軍の「虐殺」とは記録されなかったのである。
残虐行為(アトローシティース)とは何か
そこで、「虐殺」と「残虐行為」の違いが、次に問題となってくる。
「使い方が分る辞典」として高い評価を得ている『コウビルド英英辞典』は「残虐行為とは大変冷酷かっショッキングな行動である」(傍点筆者)と解説する。
その「冷酷かっショッキングな行動」に該当するのは、戦時国際法に反する捕虜虐待や掠奪、兵士の婦女強姦であろう。ジェッフリィ英国領事は、残虐行為の具体例として、掠奪の事例を指摘するのみであった。
殺戮(スローター)とは何か
次に、殺戮(さつりく)を、『コウビルド英英辞典』は、「もし大勢の人々や動物が殺戮されたのであれば、冷酷、不当、不必要に殺されたのである」(傍点筆者)と解説する。そして、現実に使われた次の用例を紹介する。
《三十四名の人々が、並んで投票を待っているときに、殺戮された。Thirty four people were slaughtered while queuing up to cast their votes.》
大勢の人々が「冷酷、不当、不必要」に殺される時、それが「殺戮」に該当する。従って『南京救済国際委員会報告書』が「十二月中旬の大殺戮」 the general slaughter of rnid-Decemher」と言う時、国際委員会は日本軍の正規兵処刑を「不当」と判断していたことを示す。
従って、問題は、それが戦時国際法上「不当」であったか否かであろう。不当であったのであれば、端的に、戦時国際法上の不当な殺戮、即ち虐殺と言ってよかった。ところが、そうは明言されなかった。
虐殺(マサカー)とは何か
最後に、虐殺は「人々が虐殺されたとすれば、たくさんの人々が攻撃されて暴力的かつ冷酷な方法で殺害されたのである」(傍点筆者)と解説される。そして、現実に使われた次の用例が紹介される。
《市民三百人が反乱軍に虐殺されたと信じられている。・・・・・・部隊は無防備の住民を無差別に虐殺した。 300 civilians are believed to have been massacred by the rebels. Troops indiscriminately massacred the defenceless population.》(傍点筆者)
無防備の市民や捕虜を、武装集団が攻撃して殺害する時、暴力性と冷酷性が頂占だ達する。従って、それが虐殺となる。
しかし、戦争は、敵を殺さなければこちらが殺されるという、生命をかけた、戦闘の連続である。南京では、支那軍の組織的な降伏はなかった。城内も、城外も、依然として戦闘員と戦闘員の戦う戦場であった。それがいかに暴力的かつ冷酷な殺害であっても、それは、藤岡信勝『近現代史教育の改革』が言うように、戦闘行為であった。
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