■ 氷点・2 ■


20禁。パパ世代、サクモ×イルカ父。最後にサクモは自殺しますので死にネタです。 注意書きをもう一度。以下の項目に当てはまる方は絶対読まないで下さい。

●妊娠中の方
●健康に不安のある方(闘病中の方)
(管理人も病人ですが書いている本人は毒を出せますので案外大丈夫なものです)
●鬱病治療中の方(特に初期、回復期にある方)
●過去いじめを経験された方
●過去掲示板で「ネットいじめ」を経験された方
(フラッシュバックが来ると思います。危険です)








「 ”いじめ” は殺人も同様、否、殺人よりも卑劣な行為じゃ。わしら忍者は例外なく 人殺しじゃ。じゃが、わしら金で殺しを請け負う賤しい生業の忍者ですら殺しの場合は しっかりクナイで殺しに行き、己の両手を血で染める。己の罪を誤魔化したり無かったことになど決してせん! ・・・なのにコヤツラ卑怯な ”いじめ” 誹謗中傷を繰り返す者どもは例え自分が”死ね”と 言った相手が本当に追い詰められ自殺したとしても ”向こうが勝手に死にやがったんだ。 単にこの程度のことを言われても耐えきれなかった心の弱い臆病者だ”と嘯き、罪の意識も 欠片も持ち合わせん!死ね、と願っていた相手が本当に死んで単純に喜ぶだけじゃ! まったく狂っとる!狂っておるとしか言いようがないわい!」


本来ならば絶対禁煙の密閉冷却されたコンピュータールームでしっかり煙草を喫煙しながら 三代目火影、猿飛ヒルゼンは吐き捨てるように断言する。
今でこそ”いじめ”の犯罪性はそれなりのコンセンサスを得てはいるが、今だに 一部の人間の中には”自殺した方の心が弱い”と思い込んでいるものも少なくない。
あるいは”そこまでおおごとにしなくても・・・”という事無かれ主義で逃げるものも・・・・
だからこそ犠牲者は尚追い詰められる。
誰に現状を、PTSDに苦しみ、絶えず襲ってくるパニックに仕事も儘ならないほど辛いのに、 目に見えてわかりやすい病気と比較し、 ”こころ” がどれだけ傷ついているかわかりやすく 他人に見せることもできない。
血の流れる心臓を胸を切り開いて見せられる訳でもない。

そこに ”いじめ” の重大な犯罪性がある。

極めて合法的に、自分が当事者とならずに、自分の手を直接下すことなく、自分の手を血で 汚すこともなく、憎む相手を殺すことができるからだ。

目に見えない”魂の殺人”、それが ”いじめ” という精神的虐待である。

事実、いじめの犯罪性が重大視されている今ですら、いじめによって自殺に追い込まれた場合、 犯人は”殺人犯”として逮捕はされない。
名誉棄損、侮辱、ストーカー、威力業務妨害等を適用し、残された遺族が慰謝料支払を要求できるのが精々。
成人初犯の場合、まず執行猶予もつくし、前科一犯の社会的制裁はあるものの、死刑になるわけでもない。

他人を死ぬまで中傷しておいても法的制裁はこのていたらくである。

自殺して死んだ者だけが丸損である。




「・・・・・・大人でも耐えきれずに自殺するんですから・・・子どもなら尚更 耐えきれないでしょう。我慢していれば現状が改善される保障があるわけでなし、 発作的に死んでラクになりたいという気持ちを責めることはできません。今はいじめ自殺に マスコミも騒いでくれるし、いじめた相手に”復讐”できる唯一の手段として文字通り 命懸けで自殺するいたましい事件も後を絶ちません・・・・」

「遺書を書き、いじめた相手をしっかり名指ししてのけることのできる子はまだ強い子じゃ。 自殺するのは弱いからではない。強いからじゃ。死ぬのが怖いわしらのような臆病者は それ故に生き残ることができたというもんじゃ。臆病くらいで丁度よい。 まずはなにふり構わず逃げることも重要じゃ。命こそもっとも守るべき大切なものなのじゃ。 名誉や誇りなどまずはドブに捨てる覚悟も強さというのじゃけどの・・・・・だが、 自殺していった子どもたちや被害者を何もできなかったわしらがもっと上手くやれ、などと 言えた立場ではないわい」

「おっしゃられる通りです・・・三代目・・・・」


火影屋敷地下の広大なスペースに展開するスーパーコンピューター”倉庫”のログを 辿りながら四代目火影、波風ミナトも悲痛な表情で頷く。


「それにしてもこのログを読んでいるだけで他人の悪口なのに俺ですら死にたくなってきますよ。 よくもまあ、延々延々延々と5年以上も他人の誹謗中傷ばかりこうも長く続けていられますね? 気が狂っているとしか思えない。常識がマヒしているのか?反社会性人格ってやつか? 匿名だから絶対にバレないとでも思っているのか?馬鹿かこいつら?んなワケないだろう? ”倉庫”もそうだが、警察のコンピューターも全部追跡できるようになっているんだぞ? 真剣に人格が分裂しているのか?それとも演技性人格障害か?複数の人間になりすましているが これ、メインの犯人はほとんど上忍のスズカ一人、ですよね?」

「悪名高き”木の葉裏サイト”じゃからのおーー。そのいじめと煽りの手法はもはや芸術じゃ。 じゃが不幸中の幸いというか、犯人が上忍のスズカと判明して幸運な例じゃわい。 その掲示板には”煽りのプロ”の男が常駐しており、今までも何人ものターゲットを自殺に 追い込んでおる本物の殺人鬼もおる。素人は知らんがわしら忍者の間では公然の秘密じゃ。 今回もその男の仕業ならやっかいじゃったが、幸い同じ木の葉の仲間じゃったからの」

「幸い仲間だったって、三代目〜〜〜、それは無いですぉ〜〜〜」

「わしは冗談を言っておるつもりはない!しめ縄!これが他里の忍者の仕業や、大蛇丸あたりに金で 依頼されたプロの”煽り屋”の仕業なら正式に戦争になっておる所じゃわい!・・・・ それはそうと、しめ縄、おぬし自身は大丈夫かの?」

「は?俺?俺は別になんともありませんが?」

「にっこり笑って誤魔化すでない!おぬしの専用スレッドもあるじゃろ?ばっちり見た のだろうが?」

「あはははは、そりゃ見ましたけど?俺が木の葉のナンバーワンで、サクモさんがナンバーツー ですもん!この掲示板の二大資源、弗様、$様と呼ばれ、誹謗中傷の限りを尽くされてますよーー」

「笑うでない!笑いごとか!・・・ま、おぬしの場合は既に四代目に決定しておるし、 ”時空忍術”が怖いからいざとなれば皆尻ごみするじゃろうがの」

「まあ、あんまり煩いようなら俺なら何の証拠も残さずに時空の彼方にぶっ飛ばし行方不明に させることができますからね、結局俺には暴力と権力という恐怖支配ができますし」

「だが・・・サクモはそうはいかん。・・・あやつは正統派のファイタータイプ忍者、 おぬしのような神がかりの忍術は使えん・・・・・おぬしのような確信犯でもなければ 根は誰よりも心優しい男じゃ・・・・早くなんとかせねばの」

「裁判所に情報開示請求は出しました。税務署にも通報済み。本人への警告状と警察への被害届 もいつでも出せます」

「うむ。警察沙汰もやむなし、じゃの。おぬしが直接スズカを暗殺しに行くよりずっとマシ じゃわい」

「ご許可さえ下されば即刻殺しますよ。だが木の葉内部のゴタゴタを 他里に知られるのはマズイですし、スズカは俺も中傷している。報復と思われるのは 更にマズイ。悔しいですがやはり合法的にスズカを葬るしかないですね・・・・・」

「うむ。それで良い。・・・・・おぬしにも良くない噂がたっておる。十分気をつけるよう・・・」

「あんな噂、俺は気にしてませんよ。この俺が近隣の子供たちに「いたずら」してるですって? 馬鹿じゃないですか?どっかの幼児性愛者の変態が俺の姿に変化して罪をなすりつけに かかっているに違いありませんよ?俺にはしっかりアリバイもあるんだし!」

「そうじゃ、お前にはこのワシがぴったり張り付いておるからアリバイはある。 じゃが、お前の”偽物”の出現といい、今度のサクモとクジラの仲への誹謗中傷といい、 なにやら更に深い陰謀の気配を感じる・・・・・わしの思いすごしじゃといいのだがの・・・」




そして三代目火影は落ち窪んで疲れた小さな目を細め、眼頭を少し指でマッサージ した後、コンピューターの画面を眩しそうに見詰めながらため息をつく。




「ネット、仮想空間の中でさえも人殺し、とはの・・・・・・どの世界空間でも人の いさかいは絶えず永遠とはの・・・・・・・・・・・わしの若いころには考えられない 事態じゃわい。わしも歳じゃの」

「三代目・・・・戦場が違うだけです。俺達の戦いは何処ででも続きます。 それに、インターネットも神が人に与え、許した下さった空間です。 本物の民主主義の萌芽のツールになるか、ただの人権侵害、誹謗中傷と犯罪の温床に なるか、それは俺達自身、一人ひとりの自覚にかかってます」

「そうじゃの・・・・・じゃが、その小さすぎる字はわしには堪えるわい。 老齢者にとってネットなんぞ存在そのものがイジメじゃ」

「あははは、三代目ったら!」




最後はやはり冗談でも言ってないとやってられない心境になったのか、いつもの木の葉の 伝統のお笑いムードにはなる。

だが、確かにもう笑いごとではない。

サクモの命と、クジラの命が今度の事件の解決にかかっているのだ。

黄色い閃光、縄を張る横綱としての名も持つ波風ミナトはログのプリントアウト 作業に戻る。

そこには今日も読むに堪えない誹謗中傷の言葉は延々と綴られている。








名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
白牙タンが今頭の中セックルでイパーイなのはまかったにょ
そんなにセックルしたくてしたくてしたくてしたくて仕方ないんかにょ
それともヅブンの任務の失敗はセックルのせいだとももいこんじょったかにょ
後者だったら白牙タン
原因はそれだけじょないですにょノシ




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
したくてしたくてしたくてしたくて
((((;´з`)))) 




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
まだ逃亡先もまからんし様子見にょな
白牙タソもヌテキなアバンチュールを脳内でお過ごし下さいにょ




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
白牙タン粘着いい加減ウゼーにょ
そんなに気になるなら自分で見に行けにょボエ




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
本人乙なのかにょ




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
自分で見に行ったりしないでここでネタねだる姿勢がぬかつくんじょまい
ほとんど毎日のように真紀子あるしにょ
白牙タンがここを見ていると想定してあせらそうとしている作戦かも試練が




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
残念ながら本人じゃないにょ
話題が逸れると必ず白牙タンマダー?でこまめに話戻そうとする香具師がいるから
あまりにも私怨臭プンプンでirirしてきたにょ
そんなに白牙タン語りだけしたいなら専スレでも立ててこいにょ




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
新しいヌレに白牙タンの天麩羅貼っても良いかにょ?




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
ヨロにょ




名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:
白牙タンのも話はウヘア通り越して興味ナスだけどイ多だけはニラニラのために読んでるにょ
最近はそれも流し読みだけどにょ
もっと激しくダンシンしてくれないとツマラナスにょああん












この時点でこの木の葉裏サイトネットいじめ掲示板のメンバーは上忍スズカの私怨になんと なく気づきヒキ気味であるが、まだ本格的にスズカのなりすましと自演に気づいてない。

私怨、

それはその通りで上忍のスズカには以前ちょっとした不正をサクモに指摘されたことを ずっと執念深く恨んでいたのだ。
そこに今度のサクモの任務の失敗とクジラとの秘密の恋の暴露が重なった。
スズカとしてみればこれ幸いと喜んでサクモを誹謗中傷し放題、この世の天国、という やつだろう。
話題が他の忍者の中傷にそれそうになる度に必死にサクモへの中傷ネタを投下し、 スレッドをサクモの中傷で長引かそうとしている。
いや、長引かそうと必死で努力していたのはサクモも同じだ。
「証拠」をとるためにこの掲示板の存在を知っていてもずっと耐え忍んでいたサクモの 気持ちを思うとミナトは胸が張り裂けそうな気持ちになってくる。




「サクモさん・・・クジラさん・・・・お願いです。死なないで下さいよ。死んだら 何もかもお終いです。どんな目にあっても絶対死なないで下さい・・・・・」




暫く泣いたことなんて無いミナトが思わず涙ぐみながら呟く。








***








旅館の白い布団の上で目覚めて、うみのクジラは自分の身体のあまりの惨憺たる状態に 唖然としてしまった。

勿論、昨夜も朝までサクモに好きにされ、徹底的にイタブられ続け、喘がされ続けて サクモが鬼畜にも宣言した通り死にそうになったが、一応クジラも男で現役忍者で 体力もあったので、なんとか失神しただけで済んだようだ。
しかし、昨夜一体何回営んだかももはや覚えていない状態までサクモに穿ち続けられた 後のクジラの身体はもうボロボロだった。
少し色黒の象牙色のクジラの肌にはもう全身余す所無くクジラの口付けの痕と歯型でびっしりと 埋め尽くされ、互いの精液の残滓も蛞蝓が移動した跡のように乾燥した白銀にヌラヌラと 光る粉状の物体として肌のあちこちを汚したままだったし、口の中にもまだサクモの 味が残っていて気持ち悪いし、何より×××が痛くて痛くてズキズキしてどうしようもない!
それでも疼痛を堪え、なんとか布団の上に素っ裸で転がされたままの自分の体を 操縦しようと上半身を起こそうとしたクジラだったが、途端、
ズキーーン!
と腰にも痛みが来て、

「痛っっ!!」

とそのまま再び汚れきってメチャメチャな布団の敷布の上に沈没だ。

うう、こりゃ酷い。

そりゃ、初夜みたいなモンだったがここまで鬼畜に徹しなくともいいだろうに!

はたけの野郎めが!


と内心で罵倒しつつ内心ではやっぱり嬉しくて顔を朝っぱらから真っ赤にさせている クジラに、縁側のソファに座って自分だけしっかり浴衣を着こみ、タバコを喫煙しながら庭なんかを 眺めていたサクモが声をかけてくる。
冬の低い所から射してくる朝日が、サクモの長い銀髪をそれ自体発光しているみたいに キラキラと反射し、改めてなんて綺麗な男なんだろう・・・とクジラはそんな”自分の男” の容姿に今さらながらぽおぉ〜〜っと見惚れてしまう。


「・・・ああ、ようやくお目覚めですか?眠り姫様?」

「なにが眠り姫だ!・・・こ、腰がマジでたたねえぇ〜〜〜」

「ククク・・・初夜の後だっていうのに全然色っぽくないな、お前。ちょっとは 恥じらってみせろよv俺が喜ぶからvvvv」」

「15年近くも一緒に居て何か今更恥じらいだ!とにかく何とかしろ!はたけ! 本当に動けないんだよ!チクショウ!」

「あーあ、エッチ突入前はあーーんなに可愛かったのにぃ・・・ま、いつも通りのお前に 戻ったお前も可愛いけどなvvvv」

「いーーーから何とかしろ!手をかせ!すぐに風呂に入らなきゃ!こんな状態を 仲居さん達に見られたら俺は腹を切らなきゃならん!」

「ハハハハ!じゃあ介錯は俺がしてやるよ。よし、じゃあ、お姫様、畏れ多いですが 不肖のあなたの下僕、はたけサクモがお姫様だっこで湯殿へとお連れいたしましょう」

「お、おいっ!ちょ!・・・うわああ!」




そしてサクモはラクラクと裸のままのクジラをお姫様だっこするとちゅうちゅうとキスを 落しながら、この離れ専用の庭の奥にある露天風呂に連れていってくれる。
サクモはそっと優しくクジラの体を湯船に落としてくれたが、やっぱりあちこちに お湯が滲み、「う」とちょっとだけクジラが呻き声をあげると、サクモが、

「すまなかったな。お前が可愛過ぎるから抑えがきかなった・・・最高だったよ、お前」

なんて億面もなく言うものだからクジラは温泉の湯船に頭までそのまま沈んでもう二度と 浮かんできたくない気分だった。
だが、朝食はなんとしても食べたかったし(昨夜サクモと抱き合う前に食べたこの宿の 料理と酒は本当に絶品だった)あのままの酷い格好で寝ていては仲居さん達が布団を 片づけたくてもできないだろう。
仲居さん達、きっと俺達のこと噂しているだろうなー、
そう思うと居たたまれないというか温泉で暖まる前に茹だってしまうというかのクジラだった。


「・・・・ううう、俺が可愛い所為にすんな!俺は前からずっと可愛いんだから仕方ない! お前が悪い!お前が全面的に悪い!はたけ!」

「はいはい、俺が悪いんです。でも、悦かったろ?昨夜はあーーーんなにヨガって 喜んで・・・・・」

「ぎゃああああああ!朝っぱらから何言ってやがるうう!」

「朝って、もう11時だぞ?」

「11時ぃぃ!あああ、なんてこった。もう昼じゃないか!仲居さん達にご迷惑を かけちまった!いつまでも片づけられなくてイライラしてたんじゃないか?」

「あははは、気にすんなって!仲居さん達もこういうのには慣れているさ! なんてったって接待のプロだからな!さっきもチラと様子を見に誰かが来たが まるで忍者もどっこいの見事な動作、気配の消し方だったぞ?あの人はどこかの里の くのいちに違いない」

「アホウ!んなワケあるか!」

「あはは、まあまあ、怒るなって。それこそ今ごろ今だ!急げ!と大車輪で彼女たちが布団を片付け、 昼食をセッティングしてくれているだろうから、俺達はなるべく時間をかけて たっぷりと朝風呂に浸かっていこう」


そしてサクモも浴衣と半纏を脱ぎ、その見事に鍛え上げた白い美しい裸体で湯船に入って くるからクジラは嬉しいが困ってしまう。


「ちょ、ちょと待ってくれ、はたけ・・・・今は俺はもう・・・」

「何怖がってるんだ?大丈夫だよ、まだキツいんだろう?お前の体を洗ってやるだけだ。 髪もな」


やさしく笑ってそう言うサクモにほっとしたのが半分、がっかりしたのが半分の複雑な 吐息を吐き、ともかくも湯船には一緒に入ったものの、風呂に備え付けられていた シャンプーのポンプを押し、まだぐったりしているクジラの体を背後から膝の間に抱きながら サクモがクジラの短い髪をシャンプーしてくれる。
少し温泉の湯で濡らした所為かクジラの頭はすぐにたっぷりの泡で泡立つ。
シャンプーは高級品らしくとてもいい匂いがしたし、
頭皮をマッサージしてくるサクモの指の動きも気持ち良くてクジラはすぐにうっとりと してきてしまう。


「・・・・かゆい所はありませんか?お客様?」

「う・・ん・・・・大丈夫・・・・気持ちイイ」

「そうか。でも念入りにしとかなきゃな。おっと、こんな所にも俺のがこびり付いているや? お前の髪は真っ黒だから目立ってマズイ!」

「だあああああああ!だからそーゆーことを朝っぱらから言うなああ!!!」


で、サクモに水遁の術などその場でばしゃああ!と浴びせちゃって、結局二人は朝から ラブラブのイチャイチャなのだが、露天風呂上空に高く高く澄み渡る冬の北の少し 灰色がかった青空はどこまでも透明で雲一つなく、正月のような快晴だ。
雪一つ降らず、氷点下が続くとはいえ1月下旬としては温かい方だと地元の人間も言っていた。
昨年のあの厳冬と大雪と比べれば今年はラクだ、いい時に来なさった、
と二人が降り立った最寄の駅の駅員さんもそう言っていた。

そうだ。昨年のあの任務の時、この国は酷い雪だった。

その雪の中、サクモとクジラはとうとう最初の罪を犯して・・・・・




「・・・うみの?・・・どうした?」

「ん、い、いや・・・・・何でもない」

「・・・・そっか」




サクモもそれ以上何も言わず、クジラの体を隅々までたっぷりと楽しんで洗い上げると 結局水揚げされた火照った肌のクジラに我慢できず一回襲いかかり、もう一度綺麗に しなくちゃいけない二度手間をかけた後、浴衣をきちんと着こんで離れの部屋に 戻った。
はたして部屋の漆の卓の上にはこれまた朝から豪勢な!(ほんとはもう昼だが)の食事が 所狭しと並べられ、基本食いしん坊のクジラはもう大喜びだ。




「ほーーーんとお前ってよく食べるなあ」

「うるひゃい・・・こんな御馳走、めったにくひぇるか!」

「日本語、おかしくなってるぞ?お前・・・ふふふ」




でもやっぱりサクモは新婚旅行ではしゃぐ新婚の妻のようなクジラの様子に目を細めて 微笑み、優しく、本当にこの上なく優しく見つめるだけなものだから、その優し過ぎる微笑が 怖くて無理して空気を作り、はしゃいで見せるクジラだった。


「ううう・・・食べきれない・・・・・残しちまった・・・勿体ない」

「なんだ?もういいのか?ははん、さては俺の×××で、昨夜はもう満腹か?」

「ば、馬鹿言ってんじゃね!」

「ははは、でもどうしよう?この料理・・・・あ、そうだ。パックン達も呼ぼう」

「は?パックン達に?あ、ああ、いいかもな。きっと喜ぶ。雪もあるし・・・・」

「あの夜の時のお礼もまだしてなかったしな。きっと喜んでくれるだろ」

「え?・・・う、うん・・・・そうだな、俺もお礼を言いたい・・」




あの夜の時のお礼、とサクモが言い、クジラも少しだけ驚いて身体を強張らせた。

サクモの忍犬、二人の仲はパックンだけが最初は知っていた。

そして結局サクモとクジラの二人の仲を暴露する役割も結果的に担ってしまった。

偶然そうなってしまったのだし、パックンが命の恩人なのは変わらない。

パックンにはやっぱり感謝している。




「そっか・・・じゃ、パックン達を呼び出すぞ? 口寄せの術っ!!!




サクモが口寄せ用の巻物を取り出し、血でもって解術すると、白煙の中、 ボフン、8匹のはたけ家の忍犬が現れた。












*次はパックンが語る「サクモ任務失敗事件」です。




■その3へつづく

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2009.1.26