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司法:道内で初めて公判に被害者参加 遺族の思い、率直に 札幌地裁

被害者参加の公判後、記者の質問に答える被害者の父親=札幌市中央区の北海道司法記者クラブで09年1月30日、近藤卓資撮影
被害者参加の公判後、記者の質問に答える被害者の父親=札幌市中央区の北海道司法記者クラブで09年1月30日、近藤卓資撮影

 刑事裁判への被害者参加制度に基づき、被害者の遺族が出廷した道内初の公判が30日、札幌地裁(石井伸興裁判官)であり、ボートから海に転落して死亡した事故の被害者の父と兄の遺族2人が出廷した。2人は被告に直接質問したほか、父(59)が「『一生償っていきたい』との被告の言葉は口先だけ。言葉の重みを考え、刑務所で反省してもらうためにも実刑を望む」と述べ、検察官とは別に求刑意見を述べた。男は起訴状の内容を認め、検察側は禁固2年を求刑した。08年12月に始まった同制度では、既に東京地裁で全国初とみられる被害者参加が実現している。

 裁判は、プレジャーボートで事故を起こした札幌市北区の無職男(42)の業務上過失致死傷罪事件。起訴状によると、神奈川県平塚市の相模川河口付近で07年4月、釣りのため男と知人4人が乗ったボートが高波を受け、同県大磯町のアルバイト男性(当時27歳)が海に転落し死亡し、2人がけがをしたとされる。男は乗船者で唯一船舶免許を持ち、操縦していた船長。出航前、天候を十分に確認しなかった過失があるとして、現住所を管轄する札幌地検が08年12月、在宅起訴した。【芳賀竜也】

    ◇

 法廷では、2人の遺族が検察官と交互に座った。「もう少しで三周忌。あなたは『償います』と言ったが、今まで何もない。本当かどうかという気持ちでいっぱいだが、大丈夫なのか」。事件後、職探しで神奈川から栃木、札幌と住所を転々としたという被告の男。「七回忌までに葬儀や墓の費用などとして分割で500万円支払う」との約束を一度も果たさないまま音信不通になった男に、父は感情を抑え、率直な思いをぶつけた。

 男は「働き始めたら、きちんとお支払いしたい」と答えたが、検察官の質問に「(これまでは)派遣社員で生活はギリギリ。(1カ所に)落ち着けず連絡できなかった」と弁明した。父は閉廷後の会見で「相変わらずその場限りの答えに感じた」と話し、不信感をぬぐい切れない様子。ただ、「被告に直接、償いの意思があるかを問いただすことができたので、(被害者参加制度は)ありがたい」と評価した。

 一方、被告の弁護人は取材に応じなかったが、傍聴した札幌弁護士会刑事弁護センター運営委副委員長の見野(けんの)彰信弁護士は「この制度によって法廷が応報の場になり、公正な審理が害される可能性がある」と懸念を示した。

 法廷には犯罪被害者の姿も。長女美紗さん(当時14歳)を交通事故で亡くした母の白倉裕美子さん(39)は「被害者の方は冷静に見えた。もし、自分があの場にいたら、被告の謝罪の有無よりも事件の内容に踏み込んだことを聞いたと思う」と感想を語った。【芳賀竜也、佐藤心哉】

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被害者参加制度 犯罪被害者団体の訴えなどを受け08年12月に施行された。殺人や傷害、自動車運転過失致死傷罪などが対象。被害者や遺族は「被害者参加人」として法廷で検察官の隣に座り、証人尋問や被告への質問のほか、検察官とは別に求刑意見を述べることができる。弁護士を付けることも可能。

毎日新聞 2009年1月31日 0時17分

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