前回は、不法入国阻止のための日本政府の要望を見ましたが、今回はそれに対するGHQの回答です。
本文は短いので一気に全部見ます。
SCAPIN1735A 日本への不法入国の阻止
GENERAL HEADQUARTERS
SUPREME COMMANDER FOR THE ALLIED POWERS
APO 500
16 July 1946
AG 014.33(16 Jul 46)GC
(SCAPIN 1735-A)
MEMORANDUM FOR : IMPERIAL JAPANESE GOVERNMENT.
THROUGH : Central Liaison Office, Tokyo.
SUBJECT : Suppression of illegal Entry into Japan.
1.Reference is made to the following:
a.Memorandum for the Imperial Japanese Government from General Headquarters, Supreme Commander for the Allied Powers, AG 014.33 (12 June 46)GC (SCAPIN - 1015), dated 12 June 1946, subject: "Suppression of Illegal Entry into Japan".
b.C.L.O. Memorandum No. 3005 (ET), dated 20 June 1946, subject as above.
c.C.L.O. Memorandum No. 3293 (CM), dated 6 July 1946, subjeet as above.
2.The requests expressed in C.L.0.Memorandum No. 3293 are under consideration.
FOR THE SUPREME COMMANDER:
JOHN B. COOLEY,
Colonel, AGD,
Adjutant General.
1.参照は以下のとおり
a.1946年6月12日付SCAPIN1015「日本への不法入国の阻止」
b.1946年6月20日付CLO3005、表題は同上
c.1946年7月6日付CLO3293、表題は同上
2.CLO3293で表現された要請については考慮中である
「考慮中」、つまり遠まわしな拒否なんですかね…
そう考えるのは、前回も触れた海上保安庁『十年史』と大久保武雄『海鳴りの日々』を読む限り、実現された形跡がないからです。海防艦は復員業務や日本沿海の掃海作業といった重要任務にまわされていたので、こちらに割くことができなかったということでもあるようですが。
もっとも、日本政府(運輸省海運総局が中心)は、この後も粘り強く要請を続け、ついにGHQは1947年4月22日付SCAPIN1622 警察警備艇として特務駆潜艇及び特務哨戒艇の使用で、旧海軍の特務駆潜艇28隻と特務哨戒艇10隻の貸与を承認することになりました。
なお、このSCAPINで参照としてあげられている「CLO No. 615 (PHW), 16 November 1946」は発見できておりません。一貫した通し番号を打っているSCAPINと違いCLOは一年ごとに通し番号がリセットされるんですが、11月の時点で615なんてありえません。実際1946年11月16日近辺に発出されたCLOは6000番台ですし。ナンバーもしくは発出日付のミスかと考えて調べてもみましたが、該当するものは見当たらりません。
『十年史』の資料11として付されている発出番号・日付ともに不明のCLO「日本向不法入国禁止に関する件」ってのがありまして、そこでは別表にあげた船舶を第二復員局から海運局に移管するよう要請しているので、ひょっとしたらそれが相当するかもしれないのですがなんとも言えず。(´ー`)y━┛
脱線しましたが、このSCAPINによって貸与された旧海軍の特務駆潜艇は木造で排水量100トン足らず、最高速力が7、8ノット、非武装だったので、劇的に状況が好転したというわけでもなかったようです。
このような状態は1948年5月1日の海上保安庁設置まで続きました。
海上保安庁の設置については、対日理事会・極東委員会でソ連・中国が「日本海軍復活の礎になるビッチ&アル」といって反対し、GHQ内部でも「組織的な、よく訓練を受けた、制服を着用した軍隊が設置されるって軍国主義的活動にあたるカモ」という反対意見が出たこともあって、結局、船艇の最大排水量1,500トン、最高速力15ノット、保安官用の小火器以外の武装禁止などといった制限つきで設置が認められることになりました。
しかも、拳銃貸与が実行されたのは1949年11月からのことで、それまでは逃走する不審船に船内食糧のじゃがいもを投げたり、船首を相手の船腹にぶつけて穴を開けて停船させ、薪を警棒代わりにして乗り込んだらしいです。なんともパイレーツなw
とりあえず、朝鮮/人密航の取締が海上保安庁設立までつながっているという流れを知ることになったので、私としては満足です。
おしまい。
xiaoke☆勉強中
今回も総督