厚生省
　内務省告示第一号

朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南（口之島を含む）の鹿児島県又は沖縄県に有する者登録令の施行に関する件左の通定む

　昭和二十一年三月十三日
　　　　　　　　　　　　厚生大臣　芦田　　均
　　　　　　　　　　　　内務大臣　三土　忠造

第一条　朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南（口之島を含む）の鹿児島県又は沖縄県に有する者登録令（以下令と称す）第四条に規定する登録調査員は市町村長に於て町内会、部落会の役員、朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南（口之島を含む）の鹿児島県又は沖縄県に有する者等にして登録調査員たるに適当なるものの中より之を指定すべし

第二条　市町村長は在住朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者の世帯の実情に応じ前条の規定に準じ若干の登録調査予備員を指定すべし

第三条　市町村長、登録調査員疾病其の他の事由に因り不適当なりと認めたるときは直に第一条の指定を取消すと共に登録調査予備員中より登録調査員を指定すべし

第四条　登録調査員は市町村長の指揮監督を承け其の担当区域内に於ける申告票用紙の配布、申告票の蒐集其の他之に伴ふ諸般の事務を執行す


調査の実動部隊となる登録調査員は、町内会、部落会の役員といった地域コミュニティの人だけでなく、登録対象である朝鮮/人たちも指定できるんですね。
被調査者が調査者を務めるというのはどうかな？とは思うんですが、彼らの実情を知る者が協力するほうがスムーズに事務も進むことは進むでしょう。


第五条　市町村長は左に依り登録調査員の担当区域を定むべし
　一　登録調査員一人にて一日中に区域内各世帯に申告票用紙の配布又は申告票の蒐集を完結し得る地域を担当地域とすること
　二　担当区域は成るべく之を町内会、部落会又は隣組の区域に依ること
　三　担当区域は登録調査員一人にて之を担当するものとす但し朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者を登録調査員と為したる場合又は水面の調査其の他特別の事情ある場合に於ては登録調査員二人以上をして一担当地域を担当せしむることを得


登録調査員は1区域につき1人、その調査員が各世帯に対して申告票用紙の配布、回収を1日間で行なえる地域を担当区域にすると。
朝鮮/人たちが登録調査員の場合は、通常1担当区域1人のところを2人以上とするという但書がついています。いかなる理由によるものなんでしょうねぇ？


第六条　市町村長登録調査員を指定し其の担当区域を定めたるときは直に登録調査員の氏名及其担当区域を告示すべし

第七条　市町村長は登録調査員をして其の担当区域内の各世帯に付左の事項に関する準備調査を為さしめ昭和二十一年三月十五日迄に準備調査票を作成せしむべし
　一　担当区域内に於て朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者の在住する世帯数但し船舶に付ては昭和二十一年三月十八日午前零時迄繋留の見込あるものに限る
　二　朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者の在住する世帯所在地の地番
　三　朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者の在住する世帯の申告義務者の氏名
　四　令第四条第六項の準世帯に在りては其の種類及名称
　五　朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者の各別人数準備調査票用紙は別記第一号様式に依り市町村長は之を作成すべし

第八条　登録調査員は準備調査の際朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者に対し左の事項を知らしむべし
　一　登録は帰還希望の有無を調査する為に行はること
　二　帰還希望者として申告したるときは日本政府の指示に従ひ帰還すること此の場合に於ける汽車賃及船賃は日本政府の負担たること
　三　申告を為さゞるとき、帰還希望者として申告するも日本政府の指示に従ひ帰還せざるとき又は残留者として申告したるときは帰還に関する特典を喪失すべきこと

第九条　登録調査員準備調査票を作成したるときは直に之を市町村長に提出すべし


先立って準備調査というものをするんですね。3月15日までに、申告の対象となる各世帯を確定し、彼らに申告にかかる事項の説明を行なうわけですな。


第十条　市町村長は準備調査票に重複、脱漏又は誤謬なきことを確めたる後準備調査票に依る世帯数及人数に応じ登録調査員に令第四条第一項の規定に依る申告票用紙を交付すべし
　前項の申告票用紙は別記第二号様式に依り府県知事又は市町村長之を作成すべし

第十一条　登録調査員は昭和二十一年三月十七日午後五時迄に昭和二十一年三月十八日午前零時に於て朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者の在住する各世帯に現在すべき各世帯に申告票用紙を配付し申告義務者に対し第八条の規定に掲ぐる事項竝昭和二十一年三月十八日午前八時迄に申告表を作成すべき旨知らしむべし
　申告義務者前項の規定に依り申告票用紙の配付を受けざるときは申告義務者の現在する区域を担当する登録調査員又は市町村長に其の旨申出て之が配付を受くべし


準備調査の結果を受けて、市町村長は申告票用紙を登録調査員に交付し、調査員は3月17日午後5時までに対象となる各世帯にそれを配り終えると。


第十二条　登録調査員は昭和二十一年三月十八日中に担当区域内の朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者の在住する各世帯に就き申告票を蒐集すべし
　申告義務者前項の期日中に申告票の蒐集を受けざるときは府県知事の定むる期日迄に其の現在する区域を担当する登録調査員又は市町村長に申告票を提出すべし


申告票は3月18日中に回収すると。第11条で「三月十八日午前八時迄に申告表を作成すべき旨」と述べていますから、午前8時以降に回収がスタートするというわけですな。


第十三条　登録調査員申告票の蒐集を終へたるときは検査の上誤謬を訂正し申告票指定の箇所に捺印すると共に準備調査票を添え府県知事の定むる期日迄に之を市町村長に提出すべし

第十四条　市町村長は前条の規定に依り提出したる申告票を検査し其の記入に重複、脱漏又は誤謬あることを発見したるとき又は申告票記入の文字不明なるときは登録調査員をして之を訂正又は加筆せしむべし

第十五条　市町村長申告票の検査を終へたるときは申告票の末尾に捺印すべし

第十六条　令第七条の規定に依る認可は天災事変其の他已むを得ざる事由に依り令第二条第一項の規定に依り難き場合発生したる後直に厚生大臣に其の事由及別段の定の案を具し之を申請すべし

第十七条　本規定中市町村又は市町村長に関する規定は東京都の区の存する区域竝に市制第六条及市制第八十二条第三項の市に在りては区又は区長に之を適用し府県知事とあるは東京都長官及北海道庁長官を含む

（準備調査票・申告票の様式は省略）

調査員は回収した申告票を点検した後市町村長に提出。ここには書いていませんが、そのあと集計して都道府県の長官・知事に提出し、都道府県ごとに集計して厚生省か内務省に提出するんでしょうな。
その結果が、以前もふれた▲送還を希望する朝鮮/人の人数になるということでしょう。

私としては、今回のポイントは第五条の三「担当区域は登録調査員一人にて之を担当するものとす但し朝鮮/人、中華民国人、本島人及本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県又は沖縄県に有する者を登録調査員と為したる場合又は水面の調査其の他特別の事情ある場合に於ては登録調査員二人以上をして一担当地域を担当せしむることを得」ですね。朝鮮/人らを登録調査員に指定する場合、なぜ複数とするのか？ってところです。ひょっとすると金英達あたりが何か書いてるかもしれませんが。

xiaoke☆勉強中