「モンスターペアレントと思われて、逆に息子への指導が厳しくなるかと思うと、怖くて学校に行けなかった」
福岡市西区で飛び降り自殺した中学1年の男子生徒の母親の言葉に、昨夏に友人から受けたある相談を思い出した。
小学生の息子は担任教師からいじめに近い扱いを受け、不登校になった。学校側に対応を申し入れたが、やがて周囲の保護者から「モンスターペアレント扱い」され、親も精神的に参ってしまった。
ドラマにもなったモンスターペアレント。学校側に理不尽な要求をし、現場で頑張る教師たちを必要以上に苦しめている保護者も、確かにいるのだろう。
だが「モンスター」の言葉が独り歩きし過ぎて、もしかしたら学校に対する保護者の正当な要求にまで、こうしたレッテルが張られてはいないか。こうした風潮の中で親が孤立感を深め、結果として誰も子供を守れない、そんな状況が作られていないか。
教育に限らず、最近、異議申し立てをする側を萎縮(いしゅく)させる「空気」を感じる。それで喜ぶのは誰なのか。一度問い直すべき時かもしれない。【尾中香尚里】
毎日新聞 2009年1月31日 西部夕刊