豊洲新市場予定地(手前)=08年5月、東京都江東区、本社ヘリから
東京都中央区にある築地市場の移転先とされている江東区豊洲の予定地の土壌汚染問題で、「市場予定地全体に連続している」と都が説明していた粘性土層が一部で確認できていなかったことがわかった。都は汚染対策を話し合う公開の会議や都議会で「粘性土層は水をほとんど通さず、その下に汚染が進む可能性は低い」と繰り返し、粘性土層の有無が不明な場所があることを公表してこなかった。
移転予定地の土壌汚染をめぐっては、極めて強い発がん性物質「ベンゾ(a)ピレン」が都公表の115倍の濃度で検出されていたことも判明。都の情報開示のあり方への疑問の声が高まりそうだ。
問題の地層は、土壌汚染が検出された埋め土の下の「有楽町層」と呼ばれる沖積層。都は06年に予定地で行った8本のボーリング調査などから、有楽町層の最上部に水をほとんど通さない粘性土が2〜20メートルの厚さで連続しており、法令などで定められた不透水層にあたると判断。汚染がその上端面より深くに進む可能性は低いとしている。
ところが、都が昨年3月から6月末まで実施した深さ方向の汚染状況調査の報告書によると、市場予定地内の441地点のうち、青果卸売場・仲卸売場を予定している地区の2地点で粘性土が確認できていなかった。
うち1地点では、都の想定より約2メートル下まで調査しても粘性土層が見つからず、もう1地点でも5メートルほど深く調べたが確認できなかった。この地点はベンゼンが地下水から環境基準の1300倍の濃度で検出された場所だった。
都側によると、昨年6月末にはこの情報を調査委託業者から聞いていたという。しかし、都は専門家会議が昨年7月に終了するまで、委員や参加者らに情報を伝えなかった。昨年11月の都議会経済・港湾委員会でも明らかにせず、「不透水層が敷地全域に連続して分布している。汚染が下に広がる可能性が低く、その下の調査は必要ない」と新たな結果の入手前と同じ答弁をしていた。