大分地裁から出る矢野哲郎被告=26日午後
県教委汚職事件で二十六日、大分地裁であった矢野哲郎(53)、かおる(51)両被告夫婦の論告求刑公判。被告人質問で、哲郎被告は収賄罪が確定した江藤勝由元被告(53)と接する中で、教員採用や昇任試験に絡む不正が常態化しているとの認識を深めたと供述。かおる被告は涙を流し、自らの犯罪を悔いた。
「ある県議から江藤元被告に電話があり、教頭試験の合格を依頼していた」。江藤元被告の家で、この場面を目の当たりにした哲郎被告は、懇意にしていた元教頭二人(いずれも贈賄罪で有罪)らの贈賄工作を決断したという。
不正のうわさを聞くようになったのは一九九六年に行政職に異動してから。周囲の話から「依頼するのは県議や国会議員秘書、市町村教育長ら。依頼の相場は県議で七百万から八百万円と聞いた」。
昨年三月、江藤元被告が人事異動の作業をしていた部屋に行った際、室内に(紙にさまざまな名前を書いた)口利きリストを張っているのを見た。江藤元被告から「何人も依頼する厚かましい人がいて困る」と聞かされ「今では尊大だと思うが、そのときは(贈賄工作によってあらかじめ長女らの)合格をお願いしておいて良かったとほっとした」と述べた。
紙に書かれていた依頼者などの名前は「混乱を起こすだけなので、公表は差し控えたい」とした。
収賄側の教育審議監富松哲博被告(60)がわいろ性を否認して無罪を主張している商品券二十万円分の贈賄に関しては「これまで(江藤元被告らに)百万円などのわいろを渡していたので、(二十万円が高額と思わず)金銭感覚がまひしていたと思う」と述べた。
弁護側は、かおる被告が自宅近くの佐伯市宇目轟(ととろ)地区のととろバス停にアニメ映画「となりのトトロ」の看板を自ら描き、地域の活性化につなげたエピソードについて質問。かおる被告は「子どもに夢を与え、豊かな自然を大事にしたいと思った」と語った。
さらに「教員とは」との問い掛けに、かおる被告は「やりがいのある仕事。生きがいでした。(事件が発覚し)死んだも同然だと、わたしは死んだと思いました」と声を詰まらせた。被告人席で、このやりとりを聞いた哲郎被告も目頭を押さえた。
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