温泉マークのある浴室の表示は、「男湯」「女湯」と書いた紙で覆われるようになった=山梨県笛吹市の芦川ふれあいプラザ
一方で、山梨県笛吹市の高齢者施設「芦川ふれあいプラザ」は07年11月、浴室に引いていた温泉の廃止届を県に提出。温泉分析書も外した。温泉は旧芦川村がまちおこしで03年に掘り当てたが、05年の調査で基準を満たさなくなっていることがわかり、その後も状態は変わらなかった。
温泉だった時は1日平均15人ほどの利用者がいたが、現在は5、6人にすぎないという。市は「地域活性化の決め手になる温泉が失われ、残念でならない」と嘆く。
温泉を旅館やホテルなどで利用するには知事への申請と許可が必要だが、基準を満たさなくなった場合、廃止届などの定めは温泉法にはない。ただし、環境省自然環境局は「温泉の表示を続けると、不当景品類及び不当表示防止法に該当する可能性が出てくる」とみる。
甘露寺所長によると、国内で現在利用されている約2万本の源泉を再分析すれば、100〜200本が温泉でなくなる可能性があるという。日本温泉協会(東京都)は「温泉が温泉でない、となったら事業者にとっては死活問題。深く掘るなどの手段もあるので、早めの対応を呼びかけている」と話している。(藤方聡)