「パレートの法則」はここでも適用されている。２０％の預金者が中国人の個人預金総額の８０％を占め、残り８０％の預金者は「取るに足らぬ多数」となり、彼らの預金総額は全体のわずか２０％に過ぎない。高成長が続く中国における貧富格差の激しさを象徴するデータだが、改善の兆しは一向に見えてこない。
さらに２０年間の市場経済で大量の失業者が生み出される一方、フォーブス誌が毎年発表している中国大陸億万長者番付を見ても分かるように富裕層も増え続け、そのスケールも年々大幅に増大していっている。「フォーブス２０００年中国大陸億万長者ベスト５０」によれば、彼らの資産総額はすでに１００億米ドルに上ったという。都市部のサラリーマンの平均月給がわずか数百ドルの中国で、１００億ドルが天文学的な数字であることは言うまでもない。
しかし納税という側面から見れば、全国の預金総額の８０％を占める金持ち達の納税総額への貢献度は２０％以下だ。また、フォーブス億万長者ベスト５０と『中国税務』誌に掲載された納税者上位５０人を比べてみると、億万長者の上位納税者はわずか４人しかいない。つまり中国の金持ちは国の納税システムの不備に乗じて「節税対策」を講じているのである。その一端は最近の「劉暁慶脱税容疑事件」から垣間見ることができる。
フォーブス億万長者で４５位の劉暁慶（リュウ・シャオチン）は、大ヒットした映画『芙蓉鎮』や『西太后』などでヒロインを演じて国内外の絶大な人気を博しながら、９０年代に入ってから化粧品や不動産などの実業界にも進出した。人気女優の知名度そのものがブランド力となり、数年も経たぬうちに巨万の富を築くことができた。
だが税に関する法的整備も欠けていた時代の中、多くの芸能人と同じように彼女も最初から納税意識が薄かった。加えて金銭に対する執着心が強かったため、税務局より注意されたにもかかわらずマネジメントを妹夫婦に任せた複数の会社の脱税を容認したり、助長したりしていたと疑われている。人気女優の勢いに乗じて彼女は国会議員に相当する全国政治協商会議委員にも選ばれたが、今では北京郊外の拘留所で取調べを受けながら裁判を待つ身となっている。皮肉なことに、この拘留所は北京にある彼女の豪邸とわずか１０キロ離れているだけで、更に同じ道路で結ばれている。
香港のメディアが伝えたところによると、朱鎔基総理は今年６月に富裕層の脱税に憤慨し、厳しく取り締まるよう国税当局に命じたという。劉暁慶がその翌月に身柄を拘束されたことから見てもとうの昔に捜査当局にマークされていたに違いない。今度こそさすがの劉暁慶も観念したのか、いつもの傲慢な毒舌ぶりも一敗地にまみれたように発揮しなかったという。
しかし、劉暁慶脱税事件はあくまでも氷山の一角に過ぎない。北京税務当局の話では昨年、２０万社の企業に勤めている高所得者で基準通りに個人所得税を収めたものは一人もいなかったという。脱税が半ば暗黙の了解で行われている実態が窺える。今、法律と世論は富裕層の社会責任を強く求めている。（2002.08.04）
（文彬） |