経営難のJ2東京ヴが身売りを検討している。不況の中、親会社の日本テレビに代わり、経営を主導する出資企業が見つかるのか。皮肉にも創立40周年の記念の年にクラブは大きな転換期を迎えようとしている。
「サッカーは金食い虫だ。日本テレビにとってクラブにソフトの価値はなく、保有している意味はイメージや社会貢献でしかない」。東京ヴの関係者はそう言い切る。
かつての名門も今季は再びJ2で戦う。昨年の入場者数はJ1で12番目の1試合平均1万4837人で同じ本拠のFC東京より1万人以上少なく、集客も苦戦。毎年、業務委託費の名目で赤字補填(ほてん)し、多い年で10億円以上負担してきた日テレには強さも人気も乏しいクラブは重荷だった。
身売り話が出る事態を「自業自得」と言う関係者もいる。93年のJリーグ発足時、Jの地域密着の理念と逆行して全国区を目指し、40億円以上かけてスター軍団を作った。客足が遠のいても地道に観客を増やす努力を怠り、01年に本拠を川崎市から東京都に移してもファン離れは変わらなかった。
経営も手堅さを欠いた。99年シーズン前、読売新聞社が経営から撤退し、運営規模を一時は20億円近くまで縮小したが、東京移転後、日テレの支援額が積み上げられた。それに甘えたクラブは、高額年俸の外国人とベテランに頼るチーム作りで失敗した。
身売り実現の場合、日テレの株式保有率は98.8%から約20%まで落ちる可能性がある。全面撤退しないのは読売グループ内の事情があるからだという。東京ヴはクラブハウスやグラウンドを保有するよみうりランドに年間数億円の賃貸料を払っており、持ちつ持たれつの関係だ。
現在、クラブは数社と交渉中としている。決定はクラブの4月の株主総会が一つのめどになり、交渉が長引くことも考えられる。(上嶋紀雄)