Print this Post Article Lists Back

ピンチにチャンスを見いだす国:海外から穀物を調達する日本(上)

穀物戦争―「恐怖の収集商」全農

 食糧自給率だけを見ると、日本は22.4%、韓国は27.2%でほぼ同じだ。毎年大量の穀物を外国から買ってくるのも同様だ。飼料の原料輸入は日本が1位、韓国が2位だ。

 他国に食糧を依存している現実は同じだが、韓国と日本の対応は対極をなしている。韓国は海外の穀物メジャー(大手穀物商社)に全面的に供給を頼っている。しかし、日本は国が率先して穀物メジャーを育てている。穀物生産国に直接乗り込み、独自の穀物収集網を広げ、空いている土地を開墾し、受け入れ国を自国の穀物供給国にしてしまう。

 「穀物戦争」が発生したら、結果は火を見るよりも明らかだ。農協経済研究所のアン・サンドン研究委員は「韓国は座ったまま穀物を買ってくることしか考えないが、日本は海外に出て獲得してくる」と表現する。この獲得の秘策を米ミシシッピ川沿いで垣間見ることができる。

◆「ミシシッピのサムライ」

 ミシシッピ川の河口から250キロさかのぼると、高さ40メートルの巨大なサイロ(収蔵庫)60基が立ち並んでいる。サイロの外壁に書かれている白い大きな文字が、その持ち主を示している。「ZEN-NOH(全農)」。それは日本の組織だ。

 全農グレイン・コーポレーション(ZGC)は韓国の農協中央会に似た組織「日本の全国農業協同組合連合会(全農)」が1979年に100%出資して作られた。社員は約80人ほどだ。しかし、その仕事は規模が大きい。日本が輸入するトウモロコシの30%に当たる年450万トンがZGCを通じ日本にやって来る。ZGCの役割は、米国の中部草原地帯の穀物を日本に安定供給することだ。

 このサイロが1回で貯蔵できる量だけも10万トン。遺伝子組み換えをしていない穀物を自動的に選別できるだけでなく、生産者を追跡できるシステムも整っている。注文が多く気難しい日本の消費者を納得させるためだ。

 日本の備えはこれだけではない。トウモロコシ畑から輸出港まで穀物を運ぶ会社も88年に買収した。全農と伊藤忠が50%ずつ出資した。韓国で言えば、食べるために米国市場を農協中央会と大企業1社が共同投資したことになる。この2社により、日本はミシシッピ川沿いのカントリーエレベーター(下の訳注)の約17%を掌握することができた。

 日本の穀物戦争の先兵であるZGC本社の玄関に入ると、光り輝く織田信長の甲冑(かっちゅう)のレプリカが出迎えてくれる。信長は16世紀に天下統一の足がかりを築いた武将だ。5年前の設立記念式に日本の全農から寄贈された物だという。日本の扇が飾られた会議室に富士山の絵が掛かっている事務室…。会社の外見は、確かにサムライ風だ。しかし、ZGCの現地化は徹底していた。社長も副社長も米国人で、社員80人のうち日本人はたった4人しかいない。1週間に3-4回ほどある全農とのテレビ会議も英語で行われる。

 国籍は米国だが、同社の米国人社員たちは日本の利益のために働いているのだ。

 ミシシッピ川沿いにある日本の全国農業協同組合連合会(全農)の巨大な穀物サイロ(収蔵庫)。高さ40メートルの巨大な塔が60基も立ち並ぶ。食糧自給率の低い日本は、米国や南米諸国など世界各地の穀倉地帯から食糧を調達している。/写真=金正薫(キム・ジョンフン)記者

ニューオリンズ(米国)=金正薫(キム・ジョンフン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る