“ノルウェー”を学ぶ 2003.2.22 |
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「ノルウェー」を学ぶ 誠之館高生徒 大使が来校し講演 ノルウェーのオッド・フォッスアイドブローテン大使(46)が21日福山市木之庄町の誠之館高校に来校。生徒たちは交流を通して、ノルウェーについて学んだ。 昨年10月、2年生が修学旅行でノルウェー大使館を訪問したのがきっかけ。生徒の勉強熱心さに感動した大使が来校を希望していた。 講堂であった歓迎会には1,2年生ら約800人が出席。大使はノルウェーの歴史や制度、経済について講演。日本との貿易関係にもふれて「今後も良きパートナーとして歩んでいきたい」と締めくくった。 質問コーナーの後、生徒代表4人が花束などを手渡し、2年吉田実希さん(17)がお礼を述べた。1年松岡友紀さん(15)は「大変勉強になった。いつかノルウェーに行きたい」と話していた。 この後、大使は福山市役所、福山大学(福山市東村町)も訪問した。 |
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学校教育への期待 高校生が示してくれたもの 妹尾正毅(せお・まさき) 無限の可能性引き出そう 広島県立誠之館高校はJR福山駅の北方2キロ、小高い丘の上にある。その正面入り口を目指して1台の乗用車がゆっくり上って行く。そこまでは、どこにでも見られる光景である。違うのはその先、300メートルの坂道を埋めた1000人余の生徒が小旗を振り、歓声を上げ、飛び出して来る。 手に持つのはノルウェーの国旗。2月21日、オッド・フォッスアイドブローテン駐日ノルウェー大使が講演をするために、私とともに、この高校を訪れた時のことである。 坂道の終わりが正面玄関、その隣でブラスバンドがグリークの「ペールギュント」から魔王の館の場面を演奏している。いつ練習したのか、難しい曲を上手に聞かせる。指揮者と握手して校長室に。そこで茶道部の生徒から歓迎の薄茶を振る舞われ、先に東京でノルウェー大使館を訪問した引率の先生と生徒が挨拶する。ちなみに、この場面を含め生徒の用語はほとんどすべてが英語である。 講堂に移り、ノルウェー国家の演奏と君が代の斉唱に続いて校長先生と生徒会長の歓迎の辞、次いで寸劇が披露される。紫式部の「源氏物語」から相聞歌を交換する場面と、イプセンの「ペールギュント」の劇。船が難破して無一文になったペールギュントが、長年彼を待っていたソルベーグと再会する場面、そこに「ソルベーグの歌」のソプラノ独唱が加わる。 更に、力強い歓迎の合唱を聞いた後、約1時間のパワー・ポイントを交えての大使の講演となる。通訳は英語担当の先生方が分担された。 高校の資料館で150年前からの貴重な品々を拝見した後、昼食を生徒とともにしてから記念の植樹。それを終えて、校舎の3階、4階からの声援に送られ、再び300メートルの人垣にもみくちゃになりながら、止めてあった乗用車にたどり着く。 大使は私に向かって「4年間の日本滞在で今日ほど感動したことはない」と述べた。 日本に駐在する外国の大使が高校で講演をするという話は、あまり聞かない。新幹線に乗り4、5時間を掛けて行くとなると、まずあり得ないことである。それが実現したのは昨年の秋、東京への研修旅行に当たり、訪問先の近くにあるノルウェー大使館を外から眺めるという案を示されたグループが、それよりも大使館を訪問したい、と考えたことから始まる。 一行は大車輪でノルウェーのことを勉強した。応接に当たった大使館員に、ノルウェー語で挨拶し、英語で質問し、素晴しいグループという印象を与えた。話を聞いた大使が興味を持ち、講演に行きたいと言った。常日頃から、日本は東京だけではない、地方にもノルウェーの仲間、拠点を作りたい、と思っていたからである。 訪問の日の歓迎は素晴しかった。何よりも素晴しいことは、先生方がこれを単なる1時間の講演に留めることなく、全校を挙げた国際交流の経験ととらえ、生徒たちがそれを自分たちのテーマとして受け止め、進んで考え、計画し、実行した、ということである。すべて念入りに計画されたものながら、その場での友好の雰囲気は全く自発的なものであり、だからこそ大使も感激したのだと思う。 自分の学校を訪れた外国の大使が国旗に向かって直立し、国歌を斉唱する姿を見守る生徒達は、日の丸や君が代についても感じるところがあるはずである。語学も大事だと強調しているだけでは生徒はその気にならないが、自分が皆の前で英語で話すとなれば事情は一変する。姉妹校ができて夏休みにはホームステイに行き来するようになれば、なおさらであろう。 私は国際交流は機会をとらえて実行することに意味があり、学生ながら自然にそれから何事かを学ぶというものだと思う。試してみると高校生も中学生も無限の可能性を秘めていることが判る。学力の低下を嘆くよりも、彼等に未知のものごとへ参加挑戦する機会を提供し、より広い世界や社会に目を開き、問題意識と方向感覚を抱いて、明日への飛躍へと続けて行く、そういう意欲と活力を引き出すことが肝要なのではないか。そういう点から見て、今回の訪問は多くのことを示唆しているように思われた。 (元駐ノルウェー大使・福山大学客員教授) 出典1:『中国新聞』平成15年3月14日
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2005年3月7日更新:誠之館人物誌へのリンク。 |