東京都中央卸売市場築地市場の移転予定地である豊洲地区(江東区)の土壌から昨年、発がん性物質「ベンゾ(a)ピレン」が公表値の115倍の濃度で検出されていたことが分かった。都は当時、汚染対策を検討するため公開で開いていた専門家会議にこの結果を報告しておらず、「情報隠し」との批判を招きそうだ。
【築地市場の移転予定地の写真】
都によると当初、予定地から土壌1キログラム当たり最大5.1ミリグラムのベンゾ(a)ピレンが検出され、07年11月に専門家会議で公表。詳しく調査するよう指摘されたため、民間業者に改めて調査を委託した。その結果、当初報告された最大値の115倍に当たる590ミリグラムが検出され、業者側は08年6月、都に報告書を提出。しかし都は専門家会議では報告せず、会議終了後の同11月になってから委員に電子メールで報告したという。
都中央卸売市場の担当者は「ベンゾ(a)ピレンは専門家会議の調査対象になっていなかったため、報告書の記載に気づくのが遅れた。情報隠しではない。専門家からは健康に影響が出る値ではないと聞いている」と釈明している。
ベンゾ(a)ピレンはディーゼル車の排ガスなどに含まれる化学物質。環境基準は設定されていないが、健康リスクが高いと指摘されている。豊洲地区の移転予定地では基準値の4万倍以上のベンゼンなどが検出され、都は586億円かけて汚染を除去し、14年末の開場を目指す方針を明らかにしている。【江畑佳明】
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